2017年4月の私的シネマランキング (No.1 ~ No.12)
私が4月に映画館で鑑賞した新作映画について、個人的によかった順番に並べて感想をまとめました。
今月観た新作は24本。
4月はとにかく『そうして私たちはプールに金魚を、』のインパクトが途轍もなく大きかったです。
目の前で展開される映画に対してここまで純粋に興奮して、その面白さに終始ぶっ飛ばされながらひたすら全神経をスクリーンに張り付けにされた経験は、久しぶりな程でした。
現在、ユーロスペースにて5月5日(金)までアンコール上映中です。
旧作ではイメージフォーラムで観た濱口竜介監督の『PASSION』と、神保町シアターで観た相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』が、どちらも他に類を見ない怪作的な観応えがあって、素晴しい映画体験だった。
『PASSION』を観た。もう〜〜〜とんでもなすぎた!!濱口監督はごく初期の時点で、人間の究極的に最も深く、果てのない部分を、パンドラの箱を開けるに等しい果敢さで追い詰めていたんだと分かった。まさに映画が人間検証の実験の場としてあるような、たまらなくディープで危うい引力。濃すぎ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『PASSION』視線・瞳の映画として早速特異な魅力をみせる序盤から、柔らかな危うさに“読む”楽しみが充満する中盤まではまだ余裕を持ちつつ観れたけど、映画としての表情やムードを次から次へと大胆に切り替えながら、エンドレスディープに人間の成り立ちへ深入りしていく後半には唸りっ放し。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『PASSION』序盤の、瞳や視線、今ここにいない2人の過ごし方といった、言語化されない状況の中に観客の想像を招き入れる語り口から、後半の、声と言葉とその報酬を極限まで全開にしたような、観客を圧倒させる獰猛な描写欲の表明へのギアチェンジに、濱口作品らしさを感じた。異質のスリル。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『PASSION』今まで観た映画の中で一番ガチな“愛についての映画”だった。“愛”なんて、自分ではコントロールも客観的に説明することも出来ない、自分の内面の中心にある永遠に大人になれない部分について、もっともらしい大層な御託を並べてハッタリかました言い訳に過ぎないのだと気付いた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『PASSION』登場人物各々が、死に物狂いの情熱と洞察を懸けて、好きな人の心を手に入れるための“言葉”を繰り出す、尋常じゃないほど言葉が強い映画だけど、そのように言葉の力が強ければ強くなるほど、如何に言葉は役に立たないかを証明する帰着が素晴らしい。身体を触れ合わす行動の無敵さ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『東京上空いらっしゃいませ』を観た。この設定でここまで安易な感傷を避けきってるのが凄い。ティーン映画にありがちな夢想的な甘さは一切排除された、“大人にこそ響くファンタジー映画”を完璧に体現した充実作。1人2役を演じる笑福亭鶴瓶(流石に若い!)が発揮するオンリーワンな説得力が圧巻。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『東京上空いらっしゃいませ』相米慎二作品らしい、腐った組織社会に染まった大人たち・男たちが支配する世界への、少年少女側からの強烈な反発というテーマが随所に見てとれる。そんな社会的な映画を、天真爛漫な少女が主役の青春映画の中で何の躊躇もなく同時にやってのけちゃってるのがカッコいい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『東京上空いらっしゃいませ』主題歌の「帰れない二人」が劇中で歌い手も伴奏もガラッと変えて4度も登場するのが本当に粋。しかもオリジナルの井上陽水版が一番地味でさりげない挿入というのがハイセンス。中盤のしっとりした加藤登紀子版を経て再度登場する、終盤のジャズダンス版には心奪われきり。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
では、以下4月に観た新作の私的ベスト1位からです。
1.『そうして私たちはプールに金魚を、』
『そうして私たちはプールに金魚を、』超絶大大大大傑作だった!!サンダンスグランプリもそりゃそうでしょう〜に尽きる。これはもう誰も敵いませんわ、最強すぎる。最強じゃない瞬間なんて一瞬も与えられてない、青春映画が到達し得る痛快さを爆発的に更新し続ける25分間。傑作じゃない理由がない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『そうして私たちはプールに金魚を、』埼玉の地味な町で中学最後の夏を過ごす15歳女子4人組の抱える、生まれた町へと呪いと退屈への鬱憤が醒めきった眼差しの先で毎日バースト連発。その映画表現がとんでもなくハイパーでユーモラスで毒々しくて愛らしすぎてぶっ飛んだ。極上の痛快感が楽しすぎる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
↑ × 生まれた町へと呪い ⇒ 〇 生まれた町への呪い
『そうして私たちはプールに金魚を、』15歳の自分達の今も未来も閉じ込めてしまうように見える地方の町や家庭を、ブラックユーモアが染み付いた醒めきった言葉達でバッサリ切り捨てていく女子達のリアルを直球で捉えながら、それをここまで超圧倒的な楽しさと面白さと共に表現し尽くしてるのが凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『そうして私たちはプールに金魚を、』この1年で観た映画で最高の編集は『シン・ゴジラ』だったけどそれを完全に超えてる編集だし、この1年で最高に笑えたコメディ映画『真夜中のパリでヒャッハー!』を超えるほど笑えた。そしてこんなリアルな青春映画はここ数年、というか今まで観たことない程で。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『そうして私たちはプールに金魚を、』本作の前では短編だから侮るってことが全く通じない。だって情報量的には余裕で長編一本いけちゃうもの。それをハイパースピーディーな疾走ミクスチャー編集で25分間にまとめ込んでるんだから、その観応えは最高に贅沢。何度観ても新しい発見に尽きないと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『そうして私たちはプールに金魚を、』中3女子の主人公が自分の家庭を「お父さんは優しいけど退屈な男。だからお母さんは浮気してる」と冷めた声色で吐き捨てるように紹介するモノローグがあって、女性の言う“優しいけどダメな男”のダメな理由が完璧な一言で要約されててうわってなった。退屈…ね…
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
2.『第3の愛』
『第3の愛』最高最高最高!!!シネマートの恋愛映画枠に求めてるもの・惹かれる理由の集合体のような一本。遂に、遂に、久々に超ド真ん中を射抜く作品に出会えた。それこそ、同じくソン・スンホンが主役を演じた『情愛中毒』や『ミス・ワイフ』級の満足度。それを王道純愛映画で満喫できる。大感謝。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『第3の愛』本作こそ『男と女』並のプッシュをすべきだったのではと思わずにはいられない、予想を遥かに超える良さだった。シンプルなラブストーリーながら物語としてもカットとしても存分な密度に貫かれていて、2人の甘く切ない心の機微表現も最高。『私の頭の中の消しゴム』の監督だと知って納得。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『第3の愛』今年の私的ベストトラックとベストMVはこれしか。英語の歌詞も付いていて本当にありがたい。カフェの前を歩くシーンでこの曲が流れた時は破格の胸キュンだったけど、エンドロールで切ない詞だったと知ってどれだけ最高なのかと思った。 https://t.co/ZKUpShGPz0
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『第3の愛』前半は思わせぶりでじれったい2人の駆け引きが魅力的に撮られてるけど“ありがち感”はあった。だけど極上のカフェシーン以降の後半に関しては完全に惹き込まれきってしまい、最高という言葉以外浮かばなった。空港の搭乗口で待ち合わせするシーンとかその後の展開とかうっとり極まった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『第3の愛』予想外のエンディングも、故に説得力のあるシックで素晴らしいものになっていて、極上の余韻に酔いしれた。最高の恋愛映画を観たって気にさせる繊細で洗練されたエンディング。仕事が忙しく一緒に過ごせる時間が限られてる2人は余韻に恋する。恋愛とは、つまり余韻のことだと気付く映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
3.『マイ ビューティフル ガーデン』
『マイ ビューティフル ガーデン』なんて幸福な余韻に浸らせてくれる映画なんだろうと、終映後しばらく突き上げてくる爽快感に酔いしれた。スペシャルキュート、スペシャル愛おしい作品。英国版『幸せなひとりぼっち』+ガーリー要素+ガーデニング、なだけじゃなく最高にキュートな恋愛映画だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『マイ ビューティフル ガーデン』この後に『金魚』を観たので変わっちゃったけど、それまで今月観た映画の中で1番だなと幸福感と共に感じられた作品。結局こういうのが一番好き。それをど真ん中でいく、少年少女の心を持ったまま大人になってしまった男女によるいじらしく優しいラブコメ。大好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『マイ ビューティフル ガーデン』不器用女子によるお隣の偏屈爺さんをコーチにしたハートフルなガーデニング初体験物語、という予告編で分かる部分以外に、図書館の職員として働く彼女が毎日図書館に通うチャーミングな理系男子とじわじわ恋に落ちる図書館デート映画の側面が半分にあって凄くイイ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『マイ ビューティフル ガーデン』主人公が自覚はないけど周囲の男性からとてもモテてしまう女性故、彼女に想いを寄せる優男たちの男ごころ映画としてもとても愛おしくて。特に、成り行きで彼女の家事使用人になったシングルファザーが図書館彼氏の存在を知った時に見せる密かな落胆表情にうおぉ〜。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『マイ ビューティフル ガーデン』お隣のガーデニング達人お爺さんとの交流パートも、年の功とユーモアを詰め込んだ、機知に富む言葉の数々で花々や庭園造りを表現していく彼の台詞が知的で心奪われた。混雑と混沌の違いを認識し、目の前の景色を“美しい秩序を保った混沌”と捉えられる感性が素敵。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
4.『恋とさよならとハワイ』
『恋とさよならとハワイ』を観た。これは今年最高のラブコメ!『サッドティー』や『3泊4日、5時の鐘』を観ている時に感じたあの幸福感で、全編が埋め尽くされている。それらの作品にあったどこかブラックに刺すような視線はなく、終始優しく良心的な眼差しであるものの、その可笑しみは最高に美味。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『恋とさよならとハワイ』最高のラブコメ、というか、そもそも恋愛についての若者同士の本気の語らいは、第3者の視点から見つめてみるとどうしても滑稽は避けられないと思うし、そうあって欲しいし、それを丹念かつ巧妙な脚本と演技で宿した恋愛映画が一番好き。本作は全編に渡ってそれを実現してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『恋とさよならとハワイ』雰囲気作りの力技で押しちゃう何となく恋愛映画や、形式的な笑いで固めたラブコメが多い中、本作の会話劇の魅力の本物さは凄く嬉しい。最高の丁寧さで自然体の恋愛の可笑しみと愛しさと味わい深さをさりげなく語りまくった絶妙な脚本。グッズがパンフではなく台本なのも納得。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『恋とさよならとハワイ』別れて半年も経つのに同棲継続中、もとい恋人じゃなくなってからの方が親友みたく仲良しという2人の関係について、その状況を語らいのテーブルにするように、友人らと様々なペアトークを通して各々の“あるべき恋愛”論をぶつけ合っていく。行き着く先は、誰かを好きって何?
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『恋とさよならとハワイ』 何かと喩えのセンスがズレてる(そこがイイ)主人公のOLが、彼を好きになった理由を訊かれた時に、自分をCD、彼をCDプレーヤーに喩えて、私の中にもこんな良い曲あったんだと彼に会って気付けた、と話す自分たち分析が、何気に恋愛の意義を的確に捉えてて素敵だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『恋とさよならとハワイ』 さり気なくも懸命で、かつユーモアに溢れた恋愛についての自然体の語らいが、ここまでしっかり密に描かれ、そのどれもが面白く、性格バラバラの登場人物の誰もに共感できてしまう映画って、実はあまりないと思う。こんなに優しく真摯に恋人たちを肯定してくれる映画は貴重。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
5.『メットガラ ドレスをまとった美術館』
『メットガラ』予告編だと“極上のドレスを纏った最高級のセレブたちが集う、華やかなファッションセレモニーの裏側”的側面が目立ってたけど、全く浮ついたムードの作品ではなくて、大舞台に情熱を注ぐ青年と強者たちによる想像を絶する試練の日々を立体的に映す。『ディオールと私』を彷彿とさせる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『メットガラ』2010年に自殺したアレキサンダー・マックイーンが如何に斬新で最高のデザイナーであったかということと、彼の功績を讃えて2011年にメットの服飾部門が開催した回顧展こそが、アート史におけるファッションの意義を変えた、等々序盤からワクワクするエピソードの無限連続だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『メットガラ』を観たら、それまでリアーナについて特に意識したことがなかった人でも一目置かずにいられなくなるはず。彼女のヒロインぶりと、映画がクライマックスシーンで宿す、神経が研ぎ澄まされるような高揚感が相まって、神々しいほどだった。 pic.twitter.com/aWN5PVSieA
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月16日
『メットガラ』の余韻は本当に素晴らしかった。自分自身の神経が清々しいほどに研ぎ澄まされた感じ。頭での理解以上に、体感として、よりファッションに惹きつけられていくような映画体験。それは、身体中の細胞が一新されたような極上な心地。生まれ変わること、生まれ変わり方を教えてくれる映画体験。ファッションとはいつだってスピリチュアルな体験で、それを求めてショップを回っているようなところがある。とても直接的な感動。ほとんどの映画鑑賞以上に。
6.『スウィート17モンスター』
『スウィート17モンスター』周りに対する劣等感と拭えない自己嫌悪感から来る、空回りの果ての自爆とそんな経験こそがもたらす成長、というのは青春/学園映画の伝統的テーマだけど、そんな見慣れた方程式の安易感をぶち抜いて、真にリアルなこじらせと成長の姿を見事モノにした、ニュークラシック。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『スウィート17モンスター』前半はまだまだ微笑ましいティーン映画女子王道のこじらせ感で、主人公の身振りから『小悪魔はなぜモテる』のエマ・ストーンの面影も感じたりして楽しいのだけど、後半になると良い意味で全然笑えなくなる。ガチで胸を刺される、容赦なくリアルなこじらせ加減描写に感嘆。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『スウィート17モンスター』主人公が17年間の人生で抱え続けてきた周囲への劣等感と自己嫌悪と、そんな感情に一体いつまで支配されながら生きなきゃならないの?という描写のリアルさが秀逸で共感必須だけど、同時にそんな姿こそが微笑ましく、真に私達を元気づけるという青春映画真髄の希望も宿す
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
昨日の『光と禿』で、クリトリックリスが本人役で主役を演じてることについて、そんな名前ががんがん劇中で口に出されるなんてPGに引っかからなくて大丈夫なの?と出演女優さんが話してたけど、『スウィート17モンスター』で主人公が折に触れて口にするエロネタの露骨さはその比じゃない生々しさ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『スウィート17モンスター』劇中音楽も親しみ満点のThe 1975や2 Door Cinema Club、Cut CopyやBeck、Pixies等々ナイスなインディ寄りポップが沢山で、こじらせが高じた生意気さが自慢だけど、リア充への嫉妬で自爆しがちな17歳を生き生き演出してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『スウィート17モンスター』生き方が器用な人達への嫉妬と自己嫌悪のサイクルの中で八方塞がりに陥ったティーンハートが救われる手立ては、もう一度子供の時みたいにがむしゃらな体当たりで盛大にぶっ転んだ先にこそ存在しているという、大人が隠したがる真理を、隣に座って親身に教えてくれる映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
『スウィート17モンスター』四六時中、自己分析を繰り返しても、次の扉は開かない事。他者に自分のありのままの姿をぶつけて、相手を傷つけ、自分も傷つき、その時やっと自分が見えて、次の扉が見えてくる事。人は大人になっても一生それを繰り返していく、常に新入生である事。それを教えてくれる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月23日
7.『娘よ』
『娘よ』めちゃくちゃ良かった!!私的に『ムーンライト』や『ジャッキー』や『ライオン』はそれぞれに味わい深い楽しみ方を享受できる作品ではあるけど、誰にでも勧められる映画ではなくて、人を選んでからそうするタイプの作品だけど、本作は誰にでも自信を持ってお勧めできる全方位で楽しめる映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『娘よ』岩波ホール上映のパキスタン映画というと敷居が高そうだけど、実際は真逆。男社会が押し付けてくる戦略結婚から母と娘で逃亡する、ドキドキアドベンチャー風情のロードムービーであり、その道中でのハートフルな出会いを優しく描いたロマンチックな映画でもある。インド映画ファンならマスト。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『娘よ』こんなに全方位の魅力を誰もが楽しめるような一品が都内で岩波ホールだけとか本当に勿体なすぎる。カリテとかTCG系列で流れてても全然違和感ないどころか、人気作になりそうな作品。随所にカラフルで鮮やかな色彩を散りばめた目にも楽しい映画。最高にハートフルなアドベンチャームービー。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『娘よ』作品のテーマや物語展開、状況設定などの多くの要素で『裸足の季節』とオーバーラップするけど、後者がじっくり彼女たちの置かれた現状や心境を見つめていく文芸テイストなのに対して、本作はエンタメ性をきっちり固めてテンポよく突き進みつつも、思慮深く繊細な眼差しは貫かれた理想的作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
『娘よ』予告編で感じられたドキドキ逃走劇の冒険性はきっちり期待通り以上で完璧だったし、映画表現としての洗練さという点では遥かに予告編でのイメージを越えていた。母と娘で命懸けの大脱出を試みるシーンの見事なトリック描写には大いに唸ったし、ラストも『裸足の季節』のそれ級の良さがある。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月9日
8.『ムーンライト』
『ムーンライト』青春映画や子供映画というのは、大人達が撮る以上、何らかの“都合良さの混入”は免れないジャンルだと思っていた。本作はそれを克服し尽くしてる。3パートのどれもが、物語全体を成す為のパーツとしては存在していない。一つ一つが今として独立してる。その正直さと真摯さが衝撃的。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月1日
『ムーンライト』家庭も学校も不安と恐怖と怒りに苛まれる場所でしかなかった10代までの(1部と2部)のシャロンにとって、ケヴィンやテレサの存在は漆黒の闇夜に射す月明かりだったけど、月明かりがなくても生きられるようになった3部の大人編でその事に気付いていく。大人になるって、これだと。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『ムーンライト』はこのようにTwitterではあまり感想を残せなかったけど、逆に感じるものや書きたいことが多すぎて140字ベースではパンクしたパターンです。
余韻、とは違うもの、未だに作品に寄せる新たな考えや、発見が、鑑賞してから1ヶ月後の今になっても、頭をよくよぎる希有な作品です。自分にとって。
それを思いっきり書き殴りたい、という気持ちを抱えたまま時間だけが過ぎてしまった…。近々書きたい。大人になること、を描いた映画として見た時に、残酷なほど、でも残酷故の本当の優しさを湛えた、真のリアルさでそれが描かれた、目を見張って普遍的な映画だと思います。世の中の、メインの観方ではないのかもしれないけど、そういった様々な要素を越えて、自分には何よりもそういった部分が、深く深く刺さった。
9.『ジャングルの掟』
『ジャングルの掟』を観た。前作の『7月14日の娘』が大好きなので楽しみだったけど、ここまでの期待の外さなさは逆に笑っちゃう程。相変わらずぶっ飛びまくった力技のギャグを序盤からこれでもかと連発しながら、フランス政府に派遣された凸凹男女がギアナのジャングルでとんでも冒険を繰り広げる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『ジャングルの掟』前作『7月14日の娘』で虜になったなら、本作もまず間違いないと思う。というか序盤に関してはギャグの量も馬鹿馬鹿しさも数段アップしてる。もう天国かと。前作のようなロマンチックさはないけれど、相変わらずあっけらかんとした社会風刺ありラブコメ要素あり、心底楽しませる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『ジャングルの掟』でも『7月14日の娘』でも、アントナン・ペレジャトコ作品のギャグはザ・映像的そのものを徹底してるから本当に痛快で楽しい。それはゴダール的なヌーベルヴァーグテイストにも映るけど、それを洒落としてやってるレベルじゃなくて、えげつないぶっ飛びレベルでやってるのが最高。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『ジャングルの掟』リアルな、美化されてない『世界の果てまでヒャッハー!』感ある。ぶっ飛びレベルは桁違いだけど。南米に存在するフランス領ギアナというジャングル地帯に対する政府のガサツな開発戦略と、就職難で?是が非でも公務員になりたいうだつの上がらない青年という組み合わせも効いてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『ジャングルの掟』地球の反対側にある辺境の地に派遣されてでも公務員になれるチャンスにすがりつきたい青年を破格のユーモアで描いたコメディという意味では、5/27開催の「Viva!イタリアvol3」で流れる『Viva!公務員』(旧『オレはどこへ行く?』)と観くらべるのも楽しいと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
カイエ副編集長を招いたカイエ週間シンポジウム、本当に面白かった。映画批評における作家主義を否定しながらも、副編集長がアサイヤスや近年のデプレシャンをバッサリ切り捨てたあたりからどんどん討論に熱がこもっていって楽しすぎた90分だった。 pic.twitter.com/BHkVRrkZ18
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
カイエ週間シンポ。カイエは17歳を理想の読者として刊行されていて、20年も読み続けている人に向けては書かれていないことや、(15、16歳で読み始めるものらしい)フランス映画批評における自然主義の定義から『アデル、ブルーは熱い色』での食事の仕方の意図に繋がっていったり面白さばかり。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
10.『はじまりへの旅』
『はじまりへの旅』特に前半で印象的な、森の中で自給自足生活をする一家が発揮する、独特なユーモアに宿る笑いや和みは期待通りだったけど、後半まさかここまでしっとりしっかりと各々の自省や挫折、そこからの再起と出発を描いてるとは。想像以上に普遍的で大事なテーマが描かれていて重みがあった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『はじまりへの旅』自給自足で暮らし自宅教育している主人公一家の教育状況を責めた親戚が逆に恥をかくシーンがあったように、家庭内の実情は他人に分からないし、踏み込めないもの。だから山奥で独立生活をしていなくても、この父親と同様の挫折に陥ってる疑いは誰にも共通で、それを示唆してる作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『はじまりへの旅』子供が生まれたら親として家族のルールを作り守らせるのは当然だけど、子供が大きくなってきた時、親は誰しもそこに挫折を感じるのだと思う。その時、自分のプライドをどちらに見出すか。自分を貫く方か、子供に寄り添い見直す方か。そんな苦悩と勇気を優しく抱きとめてくれる映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
『はじまりへの旅』劇中音楽のスコアはヨンシーの恋人アレックス・ソマーズが書いていて、劇中歌として2人のコラボ曲やシガーロスが流れる。車窓からの景色や大自然の美しい映像、予想以上に繊細で情緒的な側面を持つ物語にきらめきを添える。子供達のファッションもシガロス的世界感で美麗キュート。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月2日
11.『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』
『ジャッキー』彼女の“偉業”を陽側からストレートにドラマ化した安定ヒロイン映画を予想してたけど想定外。激動の数日間の中で彼女の内面に去来した幾つもの人格・陰なる葛藤の中から、彼女自身が新聞記者(=世間への思惑)との駆け引き対話を通して真の自分を探る重層的なパーソナル心理サスペンス
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』夫の暗殺から葬儀までをリアルタイム進行で直接描くのではなく、後日の、新聞記者と、マスコミに思惑と警戒を残す彼女との一筋縄でいかぬ対話を軸とすることで、渦中時の内面の混乱と決意を、現在の思惑と葛藤越しに回想し自答・提示する彼女の心理の重層性を、感服の手腕で立体的に描く
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』副題の「最後の使命」が、良い意味でもっと複雑なテーマを狭めてしまっている。最後の使命を遂げようとする行為は立派だけど、そこが観所ではない。様々な思惑とプライドが混在した人間らしさ。そこに正解などない、という答えは、自分が誰か明確になることはない、という真理を示す。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』何か意思決定をする度に、それがたとえ政策的なことでなくとも、”答え”や“正解”として世間から受け取られる彼女の身分、と、生涯を揺るがす人生最大の混乱、という2つの要素が繊細でスリリングなヒューマンドラマに有機的に作用して、魅惑的なほどの深い陰陽と多面性を生んでいる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』一本の映画、一つのジャンルでは割り切れないような、全く別のトーン、リズム、温度が混在した、編集が秀逸な映画。彼女の内面にある人格同士の対話のようでもあるし、同時に幾つかの映画同士の対話のようでもある。もっと言うとメディアとメディアとの対話でもあって、構造が凄い作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』随所に挿入される、彼女がホワイトハウスを案内するTV番組が象徴するように、ファーストレディという存在自体がマスメディアであって、彼女自身それを強く自覚し、的確に扱う思惑も持ってるけど、別の次元に当然、生身の人間としての人格もあって、その重層的な対比描写と連結が秀逸。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』彼女の、喜怒哀楽の次元では全く収まらない、複雑な内面の陰陽を驚くほどエレガントに並べてみせる。分かり易い感情について描かれた作品ではない。だからこそ特別な魅力が宿る。複雑なことを知りたいし、複雑さに魅かれる。女性心理の陰り、のような感触。とても女性的な映画に感じた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
『ジャッキー』彼女の側には大抵必ず古くからの親友で秘書のナンシー(『フランシス・ハ』『マギーズ・プラン』のグレタ・ガーウィグが大好演)が付いてるんだけど、2人の絶対的信頼と優しさが滲み出す関係性がたまらなく素敵で、まるで作品内におけるオアシス。ナンシー視点からの映画が観てみたい…
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月5日
12.『暗黒女子』
『暗黒女子』予想よりもずっと良くて楽しめた。文学サークルの女子達がリレー形式で、ある殺人事件についての各々の推理を物語っていく構成が効いてるし、そのヤらしい絡ませ方もメリハリが良くて分かり易い。ただ、全体像は良いだけに細かい部分の粗が多々散見されるのが惜しい。ディテールが甘すぎ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』ミステリものの生命線である、ディテールの詰めや整合性がかなり緩いので、その辺をガン見しちゃう人にはイマイチだろうけど、仲良しクラブのお嬢さま女子達が腹の中で抱える思惑や本心が良い意味で淡々と・じわじわと明らかになる過程の面白さを味わう、という主たる観所では私的に満足。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』観る前は清楚でいい子ちゃんの仮面を外した女子達による罵り合い的映画なのかな、と勝手に思ってたけど全然違って。文学サークルだけあって、それぞれが作ってきた短編小説を順番に披露し合う、その物語たちの中だけで静かにやり合うという、そのシックな女子バトル加減がとても良かった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』構成自体はシックで魅力的なんだけど、ひとつひとつのエピソードの描き方や、とりわけ後半にかけての全体のタッチは、子供っぽくてイマイチ深みに欠ける。演技とか。それぞれが作ってきた短編小説の再現ドラマも最初の2人まではいいとして、3人目以降どんどん雑になっていく。勿体無い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』作品として欠点ばかり目についてしまうのは、やっぱり全体的には充分楽しませてくれる器のある、土台はとても魅力的な映画だから。せっかく面白い映画になっているんだから、もう少し踏ん張ってくれれば思いっきり褒められるのに、って思っちゃう。とはいえ、イメージよりは全然良かった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』性格も雰囲気も6者6様の文学サークルの女の子達が、自身が書いた小説の中で自分視点から他の5人を性格付けしていく試みを、順番に観ていくのはそれだけで楽しかったし、きっと男子に一番モテるタイプの女子は、小島梨里杏さん演じるパティシエガールの小南あかねでしょうとか考えてた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』のこれ見よがしに黒くないバージョン、というか、ああいう構成で、まっすぐにリアルなお嬢さま女子高の6人の文学部員たちの交差と青春を描いたのが、若竹七海の『スクランブル』。乙女ミステリの傑作だと思う。15年後の結婚式で再会した6人がそれぞれ当時を回想するという構成も好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
『暗黒女子』ある殺人事件についての様々な立場・視点からの証言を集めいき、やがてその真実と共に、登場人物それぞれの人間性のおおっぴらにされていなかった生々しい部分が明らかになる、という意味では、お嬢さま女子高の文学サークルを舞台にした『愚行録』的作品とも形容できると思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2017年4月10日
私的13位から24位まではこちらを。
・現在、シネマヴェーラで開催中のエルンスト・ルビッチ特集を祝して、ルビッチ作品の私的ベストをまとめたもの
・2017年3月の私的ベストシネマ
・2017年2月の私的ベストシネマ
・2017年1月の私的ベストシネマ