2018年12月の私的シネマランキング
私が12月に映画館で鑑賞した新作映画について、個人的によかった順番に並べて感想をまとめました。
該当の新作は18本。
アンスティチュ・フランセの日仏インディペンデント映画特集で鑑賞した『アルテミス、移り気なこころ』(2013年)と、『ヴァンサンには鱗がない』(2014年)は新作ではないのですが、私が今回が初鑑賞だったのと、日本では映画祭や特集上映でしかまだ上映されていない作品なので入れました。
それでは、以下12月に観た新作の私的ベスト1位からです。
1.『アルテミス、移り気なこころ』
『アルテミス、移り気なこころ』を観た。これぞ映画の魔法と呼ぶしかない、目の前の現実が一瞬にしてときめきに溢れたドラマと化す幸福な瞬間で溢れた真にキュートなガールズムービー。リアルとフィクションの、おふざけと素顔の境界上にしれっと居座り通すが故の、最高に可愛らしい映画が爆誕してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月8日
『アルテミス、移り気なこころ』どう見てもごく一般の内気で可愛らしい女子大生を、全知全能の神・ゼウスの娘のアルテミスだと監督自ら真顔で説明する冒頭から笑えるし、内気で同級生に話しかけられないアルテミスに見かねた監督が煽りを入れにきたり、現実とフィクションの曖昧が超絶キュートすぎる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月8日
『アルテミス、移り気なこころ』映画における伴奏の偉大さを、サイレント映画のそれと同じ次元で実感するほど伴奏音楽が極めて秀逸で、うっとりするほど魅力的。麗しの音楽が流れ込むだけで、凸凹コンビ女子2人の気まぐれピクニック旅行が突如かけがえのない瞬間として輝き出す。映画の魔法そのもの。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月8日
『アルテミス、移り気なこころ』主人公のアルテミスが敬愛するホークスの『三つ数えろ』や、日本の魔法少女アニメの映像が突如挿入されたり、大胆な小物使いも光っていて、にこやかな悪戯心に満ちた女子2人の小旅行と合わせて、初期ヌーヴェルヴァーグの無邪気な楽しさが瑞々しく蘇ったような観応え。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月8日
『アルテミス、移り気なこころ』今年観た映画の中で一番可愛い映画だった。正反対な性格の2人の女子大生による飾らない凸凹な共同生活や小旅行を、ここまで可愛らしくかけがえのない瞬間の連なりに変えてしまう映画という装置の面目躍如。全編に溢れたおふげさと紙一重のユーモアが心底愛らしく映る。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月9日
2.『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』
『アイ・フィール・プリティ! 』を観た。今年最終週の新作にして、堂々今年最後の傑作入りを果たす極上コメディだった。心から笑えて泣けて最高に元気づけられる、年末年始の映画鑑賞にこの上なく最適な1作。負い目に感じてることをリセットして清々しい気持ちに導いてくれる、尊い魔法を宿した映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『アイ・フィール・プリティ! 』2010年代を代表するコメディ映画の傑作にして、ガールズコメディの新たな金字塔では。男子が観ても余裕でフル共感できて元気をもらえる極上のハートフル映画。主人公が働いているのが高級コスメブランドだから劇中ファッションにも思いきりときめけるし、音楽も最高。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『アイ・フィール・プリティ! 』主人公のルックスを題材にはしてるけど、描かれるテーマは人々が抱える多種多様なコンプレックスや“自分に自信が持てない問題”全般についてのショック療法的対処術コメディだから、老若男女誰が見ても共感できるポイントが見出せる、人間の心の普遍を捉えたコメディ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『アイ・フィール・プリティ! 』主人公が働く高級コスメブランドのCEOを演じるミシェル・ウィリアムズが、ロングストレートヘアに常時フェミニンなファッションを纏った麗しのガーリーぶりで、まさかこんな可愛いミシェル反則すぎだろと思わずにいれないキュートさを前に、私は早々に完全降伏だった。 pic.twitter.com/glyw3l0cs1
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『アイ・フィール・プリティ! 』の挿入歌でMaroon5 ft. SZAや元VWのRostamといった錚々たるメンツに混ざってSnail Mailまで流れ出す抜かりなさに高まってたら、次に観た『来る』ではCigarettes After SexやKing Kruleまで流れ出したから、今の映画館は稀に見るレベルでインディリスナーに優しい仕様。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『フロリダ・プロジェクト』を観た。全編に充満する底抜けに力強いエナジーに心奪われる。思わず頬が緩んでしまうシーンが無数に描かれる、残酷な程の清々しさに満ちた最強のキッズコメディ。子ども達の無敵のラブリーさとその捉え方の神技具合には『トリュフォーの思春期』を彷彿。極上の生命力映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『フロリダ・プロジェクト』もっとシビアなシリアス描写で影を差す映画かと想像してたけど、実社会的なシビアさは全て体当たりで跳ね返してしまうような、ミニマムな世界観の中で誇りを持って生きる者たち故の力強さをパワフルかつ清々しく描き通していて、解釈に広大な自由を与えている作風が好印象。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『フロリダ・プロジェクト』エンディングの秀逸さは今年観た映画の中でも頭抜けていて、最後まであの舞台を取っておいた点も含めて痺れた。コメディとは何なのかについて考えさせられる映画でもあった。一見異質のコメディにも見えるけど、実はこれこそが真にコメディの本質を捉えてるのではとも思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『フロリダ・プロジェクト』母親感や大人感を覗かせないスタイリッシュでクールな容姿が幻想的な存在感を放つ、ブリア・ヴィネイト演じる母親のルックスが異様によすぎる点も、作品を特徴付ける重要な要素になっていると感じた。なんの変哲もない現実の中に宿るファンタジックな光景を捉え続ける映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
4.『パティ・ケイク$』
『パティ・ケイク$』を観た。ラッパーとして成り上がろうとする若者を描いた音楽青春映画として見れば、だいぶ地味な印象の作品だけど、幾多とある音楽青春映画の中でも、ここまで田舎町での閉鎖的な生活環境や貧乏生活に四苦八苦する姿をじっくりリアルに捉え続けた作品は稀有で惹き込まれた。力作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『パティ・ケイク$』ラップで成り上がろうとする若者を描きながらも、ニュージャージーの田舎町で必死のワーキングプア生活を送る23歳女性を主人公にした本作の挿入歌がスプリングスティーンであるように、いかにもラップもの映画というより、初期スプリングスティーンを彷彿させる普遍的な青春映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『パティ・ケイク$』無名な若者がスターまで駆け登るような派手な物語じゃなくて、初めて人前でライブを成し遂げるに至るまでの生活全般の四苦八苦をリアルにじっくり描き続けるからこそ、物語が進めば進むほどに彼女がラップに懸ける思いの切実さが身に染みてくる。ラップ版「明日なき暴走」のよう。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『パティ・ケイク$』閉鎖的な田舎町でドラッグや窃盗といったヒップホップ王道の不良要素とは無縁の生活を送り、問題だらけの家族の為に必死で働きながら、町を抜け出す為のラップを日毎書き続ける女性を描いた本作は、日本の田舎町を舞台にしたラップ青春映画『BEATOPIA』と共鳴する点を多々感じた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月29日
『パティ・ケイク$』前半はラップもの青春映画という先入観に対して音楽の熱量も、生活描写とラップ内容との接点も低めな映画という印象だったけど、初ライブに向けて苦境の中でもがく後半になると物語の濃度も彼女がラップに懸ける思いも切実さが増し続けて、理想的なラップ青春映画だとさえ思った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
5.『おとなの恋は、まわり道』
『おとなの恋は、まわり道』を観た。大人のためのラブコメとして今年最高の1本では。2人の一番最初の会話から思いきり笑えて、その後も全会話=全シーンでニヤニヤが止まらなかった。ロマンチックでいられる季節を追放されてもなお、互いの存在を求めずにはいられない男女の機微を絶妙に描き上げてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月23日
『おとなの恋は、まわり道』ロマンチックな幻想を描く力を喪失し、良くも悪くもあけすけに生きることに恥じらいを感じなくなった大人の男女2人の会話劇が、否応なく可笑しみを誘うリアルさとユーモア全開で描かれる絶妙コメディ。ロマンチックを卒業した後のラブコメの模範解答を体現したような観応え
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月23日
6.『真っ赤な星』
『真っ赤な星』を観た。全編に渡って途絶えることがない完璧な観応えは、遥かに期待以上。オープニングから強く心を捉えられ一瞬も離さない主演2人の迫真の演技、拘り抜かれた色彩や逆光演出が秀逸な映像の美しさ、生々しい感情しか存在しない高密度の物語、どこを取っても普遍的な魅力を備えた力作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『真っ赤な星』今年のTIFFで圧巻の傑作だった『ミス・ペク』を彷彿する観点を含みながらも、年齢も社会経験も離れた2人の女性の関係を、精神的に対等な地平まで辿り着くに至らしめる、2人の女優による繊細で生々しい感情表現とその胸を締めつけるほど切実な交差劇は、真新しい凛とした感動を生み出す。 https://t.co/itsys2AgXs
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『真っ赤な星』素直な感情を持って生きていたら自分を守れない境遇で暮らす14歳の女子中学生が全編に渡って放ち続ける、素直な自分で居られる唯一の存在・27歳の弥生ちゃんに訴える限界なき愛は、どんな恋愛映画で見るそれよりも絶対的に切実で強い。それを役と同じ14歳で体現尽くした小松未来が圧巻。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『真っ赤な星』男女間の生々しい性愛も色濃く描かれるけど、作品の真摯で澄んだムードが、それらも決して下世話なトーンで映さない。にもかかわらず、感慨深く美しいラストを締める少女の台詞が、大人の女心をシニカルに見抜く不意打ちに世慣れた一言で、こんな洒落た大人なエンディングまじかと感嘆。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
7.『マダムのおかしな晩餐会』
『マダムのおかしな晩餐会』を観た。資産家のマダムと彼女に仕えるメイドを巡る、上流階級の愛憎劇を舞台にした身分偽造ラブコメとしての小慣れた大人の楽しさは予告編からの期待通りだけど、完全予想外なエンディングの意外性が、ともすれば軽妙すぎる印象の作品に真のテーマと深みを与えていて秀逸。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月1日
『マダムのおかしな晩餐会』身分違いの恋と、それにより勃発する身分を越えた嫉妬劇を描いた、大人の苦い機微が楽しいコメディ、で終わらないのが凄い。虚栄心ばかりで中身スカスカな上流階級に対して、メイドの彼女が下す爽快なほどシニカルな結論が、クールな風刺映画へ一瞬で変貌させる様に唸った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月1日
『マダムのおかしな晩餐会』物語の黒幕となる、マダムの義理の放蕩息子が、身分違いの恋に仕向けたメイドをネタに書いている小説のタイトルが『メイド』で、虚栄心ばかりの上流階級にシニカルな見切りを下す本作の原題が『マダム』であること、揶揄に揶揄返しをお見舞いする痛快さ全開で最高にクール。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月1日
『マダムのおかしな晩餐会』見映えや身分が、本質を捉えることから人間をひどく遠ざけることの恩恵ばかり増してる現代だからこそ、そんな社会の見栄と嫉みばかりの空虚な有り様をシックなコメディで軽妙に風刺し続けた果てに、そこから降りる生き方もあることを清々しく提示する本作は深い余韻を残す。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月1日
8.『彼が愛したケーキ職人』
『彼が愛したケーキ職人』魅力的すぎる予告編から窺えたムードやストーリーが期待像そのままに描かれる一方、意外性や驚きの展開といったものには乏しいけれど、このままずっとこの作品の中に留まって居たい、まだまだ終わらないでいて欲しい、と心の底から自然と願ってしまう心地よさ。シックの極み。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
『彼が愛したケーキ職人』派手な展開は必要ない、一瞬一瞬に豊潤で繊細な観応えが宿り続ける、瑞々しく美しいヒューマンドラマである一方、ドイツ人の主人公が恋人の行方を捜して向かった、ユダヤ人の中心都市・エルサレムで受ける境遇を通して、深くて新鮮な社会性も宿した物語になっていて、理想的。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
『彼が愛したケーキ職人』同じ最愛の男を亡くした、彼の妻とドイツ人青年の姿を、親密な距離感から豊かな眼差しで見つめ続ける一方で、彼の面影を求めて彼の家族が住むエルサレムで暮らし始めたドイツ人青年の想いを、徹して台詞で喋らせないところが、観客に預ける極上の余白を生んでいて本当に好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
『彼が愛したケーキ職人』今期一番理想的な大人のデート映画。誰かに惹かれていく心の動きも、異文化社会でアウトサイダーが受ける厳しさも、そんな分断をも溶かして人の心を人に開かせる“美味しさ”という魔術も、それを宿した沢山のクッキーやケーキたちも、全てが優美な繊細さを湛えて描かれた物語。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
『ブルーム・オブ・イエスタデイ』等、ホロコーストが現代にも及ぼすものを描いた映画が度々新作で上映されるけど、『彼が愛したケーキ職人』に見るドイツ人青年がユダヤ人の街である現代のエルサレムに滞在する日々からそれを描いた観点は新鮮で、それはルビッチ『私の殺した男』に近い視点でもある。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
9.『マチルダ 禁断の恋』
『マチルダ 禁断の恋の恋』を観た。大人の大人っぽくおさまれない濃厚な男女関係を贅沢極まるスケールで描いたエンタメ大作として完璧な観応え。ミニシアター上映だけど完全にシネコン級のあらゆる面で突き抜けた完成度が光る。絢爛豪華なのは舞台や衣装だけでなく、ドラマそのものの引力も超圧倒的。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月9日
『マチルダ 禁断の恋の恋』19世紀ロシア帝国の王室もので、舞台や衣装の豪華さは堪能できるとして、核心の恋愛劇部分にリアリティを見出せるか半信半疑だったけど、パーソナルな恋情にじっくり寄り添い続けるスリリングで親密な語り口に、時代設定やキャラクターの身分に関係なく思いきり入り込めた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月9日
『マチルダ 禁断の恋の恋』婚約者のいる次期皇帝と、宮廷に仕える花形バレエ団のトップアイドルとの情熱的な不倫劇を、ドラマチックで大胆な逢瀬描写と滑らかで絶妙にスリリングな語り口で描いた本作は、不倫劇特有の薄暗さや背徳感とは無縁で、清々しい程に艶やかに燃え上がる恋情で満ち満ちている。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月9日
『マチルダ 禁断の恋の恋』美しいバレリーナ達に対する男どものあからさまな態度は、19世紀宮廷社会の再現とはいえ、現代も変わらぬ部分も見えて痛いけど、それらを全部クールに突き返すミハリーナ・オルシャンスカ演じるマチルダの凛々しい目力と神秘的な美しさには目も心も釘付けになってしまった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月9日
『マチルダ 禁断の恋の恋!!!???』、いま気付いた!タイトルは打ち間違いの確認が面倒だからいつもペーストしてるんだけど、それで逆に全部を間違え通したパターン。全部が平然と「禁断の恋の恋」なの、自分可愛すぎだろって思った。
10.『ヴァンサンには鱗がない』
『ヴァンサンには鱗がない』まさかこんなにキュートなコメディだとは。平凡な優男 × 水に濡れてる時だけ怪力化、をファンタジー的にではなく、リアリティに徹するが故のシュールな可笑しみと素朴な愛らしさ全開に描いていて好きにならずにいられない。キュートなカップルの純愛コメディとしても秀逸。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『ヴァンサンには鱗がない』水に濡れれば濡れるほど怪力化してしまう主人公がその力を発揮する時の、実写性に徹した描写がとても特徴的で、最高に魅力的。警察からの逃走劇となる後半では『キートンのセブン・チャンス』の現代版では、と思わせる、可笑しな凄さの逃走アクションシーンもあって大満喫。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『ヴァンサンには鱗がない』主人公の秘密の怪力化体質をあっけらかんと共に楽しみ、“世界一長い愛撫よ”と言ってラブシーン史に残る超絶ラブリーなユーモアを炸裂させる恋人役のヴィマラ・ポンスがとても素敵で、彼女がヒロイン役を務める『7月14日の娘』と『ジャングルの掟』が尚更また観たくなった。 https://t.co/JFAjPj62c7
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
11.『いつか家族に』
『いつか家族に』を観た。微妙を極める、ある意味稀有な映画。主人公のキャラ造形が酷いのとそれを堂々ドヤ顔で繰り出す語り口は、児童虐待や女性蔑視を美化して描いているという印象は免れない。でも、それを過程に収める帰着の仕方や俳優の演技をはじめとした映画そのものの力は魅力。本当に微妙〜。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月23日
12.『来る』
『来る』を観た。さすが中島作品だけあって強烈な観応えで貫かれた映画ではあるけど、肝心の“来るもの”の本質やそこから投げ掛けられるテーマが最後まで曖昧、というか著しく弱いため、とりあえず全方位にド派手な観応えを叩きつけるエンタメ大作という域を出ていない感。『渇き。』には数段劣る印象。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『来る』最も目を見張るのは、全編を通して次々と人格の表裏あらゆる面を披露することになる実質的主人公を演じる黒木華による圧巻の体現ぶりで、これを観れただけでも余裕で元が取れたほど映画的快楽に痺れる瞬間が幾度もある、後半に。現時点で本作が黒木華の最高傑作だと思う。後半のあの凛々しさ!
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『来る』多面的な物語というより、それぞれの側面が物語の表面を次々に上書きし合って作品のテーマがカオスと化す、各側面のインパクトがぶつかり合い続ける派手さ史上主義的な見せ方が勿体ないと感じた。妻夫木聡と黒木華演じる夫婦の裏側描写が魅力的だと思ったけど、最後にはその感慨が殆ど残らず。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
13.『パッドマン 5億人の女性を救った男』
『パッドマン』を観た。過酷な偏見を一身に受けながら孤軍奮闘で辿る、地道な製品開発とその事業化のプロセスが驚くほど愚直かつ丁寧に描かれた、ものづくり奮闘コメディ。孤独な思いやりと葛藤の年月を越えて辿り着くクライマックスのスピーチシーンは今年の映画で一番涙。男性にこそ観て欲しい作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『パッドマン』題材はナプキン開発だけど、その描かれ方は極めて普遍的な商品開発(他人が本当に求めているものを試行錯誤しながら極めていく)プロセスで、その愚直さには主人公の性格共々驚いたのだけど、クライマックスで予想を越えるシックなラブストーリー描写があって、繊細なエモ表現もバッチリ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『パッドマン』意外にも男性側からの女性への理解という視点での描写は控え目で、それ以上に社会風習からの偏見に対する孤軍奮闘という側面がメインだけど、甘い情緒に安易に逃げていない分、テーマの切実さが多面的に伝わってくるし、情緒面はスピーチシーンで完璧だから絶妙なバランス感だと思った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
14.『マイ・サンシャイン』
『マイ・サンシャイン』を観た。大人から見たら理不尽で過酷な生活環境をも一瞬で霞ませる、元気な子どもたちが集まった時の瑞々しく弾けるユーモアのリアルな描写等、監督の前作『裸足の季節』から引き継がれた魅力も多々あれど、語り口やテイストは前作のイメージから大きく飛躍した、強烈な意欲作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
『マイ・サンシャイン』行政や司法による黒人への人種差別的行動からLAの広範囲を巻き込む大暴動に発展した92年の事件を、その街でかけがえのない暮らしを営んでいた無邪気な大家族のパーソナルな生活描写を軸に描くことで、守りたい誰かがいることの尊さと痛みが普遍的な臨場感を伴って迫ってくる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
『マイ・サンシャイン』警察や司法による止まらない人種差別的行動とそれに対する市民の反発によって街の治安が崩れても、パワフルで優しい母親に守られながら無邪気に今を楽しむ大勢の子供たちの愛しき姿は『フロリダ・プロジェクト』に比類するほど圧巻のリアリティで、何度も胸がキュンとなった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
『マイ・サンシャイン』社会的意義の強い事件を題材にするにあたって、パーソナル一辺倒な物語に止まらない視野の配置を考慮してか、当時のTV報道映像がドキュメンタリー的に随所で唐突に多々挿入されていく点が、前作『裸足の季節』でも魅力的だったナチュラルな語り口の効果を抑えてしまってネック。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
15.『葡萄畑に帰ろう』
『葡萄畑に帰ろう』観た。難民追い出し省の大臣として非人道的政策を打ち出しながら、自身は贅沢三昧な主人公が辿る没落を通して政治家を風刺するブラコメを想像してたけど、趣が少し違った。監督自身が政界経験者なこともあってか政治家の立場に寄った視点から人間の普遍的愚かさを優しく描いた作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『葡萄畑に帰ろう』弱者には無関心で目上の者と自分には激甘な大臣の没落を、気が弱くて鈍い彼のパーソナルな視点から、でもまぁ人間なんてこんな風に情けなくて弱いものでしょう?とでも言いたげな、ゆるく穏やかなムードで描いたほんわか寂寥ブラコメ。締まりはない妙な癒し系だけど心地よく見れた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
『葡萄畑に帰ろう』原題の『The Chair』が示すように、主人公の没落政治家が大臣時代に買った超高性能椅子(ちゃちなSFファンタジー設定で人格がある)の一生を通して、彼の主人である大臣の行く先を追った物語になっていて、ジョージア発の牧歌的映画にまさかのSF描写が序盤から挿入されていて驚いた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月30日
16.『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』
『マンディ』を観た。全編に注がれる程よくサイケな映像演出が、ラブラブ夫婦の夜をうっとりロマンチックに描く序盤は予想外のシックさに感心したけれど、敵キャラの武器のちゃちなファンタジー感等に冷める。が、主人公のあの超迫真の悲しみぶりを見せられたら後半はひたすら心から応援するしかない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
『マンディ』中盤までは敵キャラ周りでちゃちな描写が目立つのも事実。でも、冴えない見た目の中年男を演じるニコラス・ケイジの超絶迫真演技が、やがてその全てを蹴散らして怒涛のクライマックスに連れて行ってくれる。奥さんを亡くした直後の彼の慟哭とキレっぷりには泣きそうになった。最高の男だ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2019年1月2日
17.『僕の帰る場所』
『僕の帰る場所』を観た。ドキュメンタリーと錯覚する程の圧倒的なリアリティが、ここで描かれるものの全てを自分にとっても重く切実なテーマであると感じさせてやまない。生まれた国の中で一生過ごし続けることを疑わない暮らしが、どれほどの想像力を喪失させるのかを身につまされて実感させられた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月7日
『僕の帰る場所』東京を舞台にした前半は親の視点からドキュメンタリータッチで描き、ミャンマーに舞台を移した後半では子どもの視点からドラマチックな演出を交えて描かれることで、生活のための外国移住というテーマを親と子ども双方のリアリティとしてじっくり体感できる点がとても秀逸で、奥深い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月8日
18.『クレイジーアイランド』
『クレイジーアイランド』無数に現れる極端に戯画化されたキャラクター達による軽薄なコントのような描写が、全編に敷き詰められていてキツいノイズこの上ないし、主人公を引き立てる為にここまで他のキャラを安易なおちゃらけ描写で落とすのかとドン引き。去年の『ぱん。』が最高だった故に大変残念。 https://t.co/xZx3812cXB
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
『クレイジーアイランド』去年のムーラボ上映作『ねえこの凹にハマる音をちょうだい』の後半で描かれる世界観やムードに、更に強烈なおちゃらけた戯画化を施した印象で、観る人をかなり選ぶ作品という感触。舞台を大阪に移して以降は物語のテーマが切に迫る瞬間もあるけれど、あまりにノイズが大きい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年12月2日
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