2015年上半期の私的ベストシネマ 30選(No.1 ~ No.10)
2015年も折り返し地点を迎えましたので、世の中の慣習に便乗して私も今年の上半期6か月間で観た映画のまとめを。
この上半期に私が映画館で鑑賞した作品の中から超私的な感覚で1位から30位までを勝手に選びました。
ここに挙げる作品を筆頭に、数々の新作に喜ばしい映画体験をさせていただきましたが、個人的にこの上半期を振り返った時に、4/25~5/15にシネマヴェーラ渋谷で開催されたエルンスト・ルビッチ監督の特集「ルビッチ・タッチ!」と、4/11~4/19にシネマート六本木で開催されたマレーシア映画ウィークで観たヤスミン・アフマド監督の『タレンタイム』は何よりも忘れられない体験になりました。
特にルビッチ特集には全19作の上作品中、18作品に足を運ぶほど本当に心を奪われてしまい、次に観るルビッチ作品への楽しみさで、あの3週間は毎日が特別な希望に包まれているような心地で過ごしたほどでした。おかげで本気で一番好きな映画監督を見つけられた2015年の上半期になりました。
『タレンタイム』を上映してくれたシネマート六本木でも、この上半期、特にたくさんの素晴らしい作品を観ることができました。同じくマレーシア映画ウィークで観た『破裂するドリアンの河の記憶』や『ムアラフ 改心』や、新旧の瑞々しさに溢れた台湾の青春映画たちがそれにあたりますが、特に閉館日の最終上映で大好きな『GF*BF』を上映してくれたのは、本当に嬉しく、感動的でした。
では前置きが長くなりましたが、私的30位から。
なお、基本的に日本での公開が2015年1月~6月の作品を基準に選出しましたが、中にはそうでないものもあるかもしれません。そのあたりはご容赦ください。
私的30位から11位まではこちらを。
10.『私の少女』
『私の少女』を観た。見事に期待以上の素晴らしさ。 理不尽な環境の中で孤独でも懸命に生きる女性警官と少女の心の機微と触れ合いを、田舎町の景色を背に繊細に瑞々しく描写する。理不尽な暴力や抑圧に対するやるせなさや痛みもしっかり伝えながら、2人の本当の強さを随時感じさせるところが好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 4, 2015
『私の少女』は昨年の話題作『チョコレートドーナツ』とリンクする点を多々見出せる映画で、『チョコレートドーナツ』を観て“悔しすぎる”、“いくらなんでも救われなすぎ”と肩を落とした人には、やっと“やっぱりこうこなきゃ”という開放感を感じられる作品でもあるかと。こうこなきゃ。良い映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 4, 2015
『私の少女』ペ・ドゥナ演じる女性警官の無口な佇まいが作品に深い魅力を与えてる。かけがえのない繋がりを築く虐待に耐える少女とのやり取りも、言葉は少なく、簡潔で、それでも同じ頭の高さで目をじっと見て話を聞こうとする。そんな豊潤な空白は体温のような余韻を宿し、物語に温かさを添えていく。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 4, 2015
9.『パレードへようこそ』
『パレードへようこそ』を観た。めちゃくちゃよかった〜〜〜!!!予想してた何倍もよくてスルーしなくてよかったと本当に思える。観る前はコミカルで賑やかなイメージがあったけど、とても丁寧に描かれた青春映画で、幾つものパーソナルな物語が見事に束ねられてる。瑞々しい爽快感でいっぱいの余韻。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 21, 2015
8.『おばあちゃんの夢中恋人』
『おばあちゃんの夢中恋人』を観た。大変良かった!!隙間なく楽しい大充実作!台湾語映画が活況を迎え日々沢山のB級映画が製作されていた1969年の“台湾ハリウッド”北投を舞台に繰り広げられる、ドタバタ映画製作ミーツ純愛ラブコメ。日本の特撮等当時の映画へのオマージュに満ちた愛しい良作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 3, 2015
『おばあちゃんの夢中恋人』まさかここまで楽しさと瑞々しいときめきに満ち満ちた、非の打ち所が見つからない良作とは!完全に予想以上!『オーロラの愛』もよかったけど、それ以上にずっと良い。映画好きにはとにかく楽しい作品だと思う。B級映画製作現場の勢い任せの情熱と悲哀を生き生き描いてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 3, 2015
『おばあちゃんの夢中恋人』ラブコメとしても当時の古典的な恋愛映画へのオマージュと思われるザ・王道な展開を次々と取り込みながら進んでいくので、キュートな楽しさに溢れてる。塀の上から美少女が落ちてきてワンピースの中に頭を突っ込むなんて出会い方もごく自然に感じられる愛嬌に満ちた作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 3, 2015
『おばあちゃんの夢中恋人』あと一週間で上映が終わってしまうのもったいなすぎる、ってくらいめっっっちゃ良い。タイトルとは裏腹に若い美男美女が“台湾ハリウッド”で台湾語映画の製作に情熱を注ぎ込んだ日々の物語だし、おばあちゃんは90%以上1969年当時の美少女として出てくるし最高映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 3, 2015
7.『ブルックリンの恋人たち』
『ブルックリンの恋人たち』を観た。一番好きな雰囲気の映画すぎて心底酔いしれた。よりシックでしっとりとした『ビフォア・サンライズ』の空気感というか…2人が交わす言葉の量も、そっと気遣い合う大人な会話の温度も控えめだけど、その控えめさが本当に心地よくて、真にエレガントで…。大満足。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) March 15, 2015
『ブルックリンの恋人たち』はシャロン・ヴァン・エッテン等、インディ・フォークやネオ・ヴィンテージの情緒豊かな歌唱の数々によって時を刻んでいく。だけど歌モノ映画特有のクサさがない。ブルックリンの夜のしっとりとした空気に溶け込むように、2人の密かな心の揺れや震えをそっと代弁していく。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) March 15, 2015
2人が会えるのは同じ街にいる1週間足らずの限られた数日だと知っているけど、不安で心が擦り切れそうな日々の中で、毎晩その人と過ごす時間だけは穏やかでありのままの自分に戻れる…真夜中の街を背に。『ブルックリンの恋人たち』と『ロスト・イン・トランスレーション』に流れる空気は同じ肌触り。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) March 30, 2015
6.『Mommy / マミー』
『マミー』を観た。普段、恋愛映画ばかり観ては恋人達の愛情表現を観察して上から目線でああだこうだ言ってる自分が恥ずかしくなる、究極の、愛についての映画。これがザ・ラブストーリーでしょ、と。それなのに映画そのものは重苦しくなく、実に風通しがいい。隅々までとことん圧巻。私的に今年一番。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
『マミー』1:1の画面サイズは視野が狭く感じられて、多様される人物の首から上の顔面アップでは、ほぼ背景は見えず、主対象物である人物の顔で埋め尽くされる。これは、周りの風景など目に写す余裕はなく、ひたすら相手のことを見つけ見つめて生きなければならない、2人の視界そのものを示してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
だから『マミー』の画面サイズは窮屈なのではなく、2人にはそれが精一杯最大限の視界では、と。だから、同じ視野を共有できる3人目の、第三者と繋がれた時に、その視界はようやくもうひとり分ほどサイドに広がった視界を持てるようになり、生きる世界も広くなる。それをあんな風に表現するから凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
『Mommy』愛し合える恋人達は、もし仮に“愛”がなくとも互いを思いやり行動して、仲良くやっていけるのでは、と感じた。仲良く互いに思いやってる恋の状態に対し、“愛し合ってる”という言葉を当てはめただけなのかもと。そう呼ぶに相応しい状況が既に出来上がってから、別の言葉に差し替えた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
一方で、“愛”や“愛してる”という言葉を仲良しの恋人達以上に日常で活用する状況にある『Mommy』の親子は、そういった愛し合える恋人達の使う“愛”の言葉の成り立ちとは状況と言語化の順序が逆に見える。しかし。そこでこの偉大な映画が伝えるのは、そもそも“愛”とは何であるかということ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
『Mommy』“愛”とは、互いに思いやって行動できる2人の間にはそもそも必要のないものじゃないか。互いに思いやって行動できてる、とそれぞれが信じ合えてるなら、そこにある“愛”は現象ではなく、賢くて洗練された素敵なリップサービスではないか。勿論、肌の触れ合いと等しくそれも必要重要。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
だが『Mommy』という映画で登場する“愛”という響きは言葉ではなくて、現象の“愛”だ。「今まではできなかったけど、今からは、互いに思いやって行動できてるとあなたと信じ合いたいよ。」という、(それが親子であっても)決して重なれないし、入り込めない、人間と人間の隙間を埋める祈りだ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
『Mommy』キャッチにもなってる台詞「私たちには愛しかない」とは、親子であっても決して肌の向こうは知り得ない目の前の人間と自分自身との間にある隙間に、“あなたと等しく信じ合いたいよ”という祈りを注ぎ込むことしか、今なす術は持ち得ない、という満身創痍の覚悟と根拠なき絶対の自信だ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
そしてそんな根拠なき(つまり本能的といっていい)絶対的の自信を超自然的なテレパシーみたいなもので共有し合える人間なんて、私自身の感覚でも振り返ってみたんだけど、私をこの世界に出して育てた「Mommy」しかいないのではと思った。だが、しかし、(ここからは映画の主題とは少し逸れるが)
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
多くの場合、人は歳を重ね、社会との関わりを濃くする中で「Mommy」離れをする。だけど、主に男性の場合、本当はそんな綺麗には収まらず、母離れはしても、その替わりに自分にとってのそんな「Mommy」役を心惹かれる女性の中に見出し、母親とかつて共有した“愛”を強引に当てはめたりする。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
映画『Mommy』では作中一、二を競う印象的なシーンでoasisの「Wonderwall」が流されるが、このプロポーズのみたいな求愛ソングはそんな事例の世界的代表例だろう。サビの歌詞は「きっと君だけが僕を守ってくれる」だ。そんな恋愛の歌を『Mommy』という映画に使う憎いセンス。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 29, 2015
そんな究極の愛の在り方を全編に渡って、表情豊かに、生々しく描写し続ける『Mommy』だけど、だからといって映画そのものは決して重苦しくなっていない点が本当に見事で。鮮やかで美しい胸踊るポップミュージックの数々と、洗練されたカメラワークが心地良いほどの風通しの良さを生み出している。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
5.『青、そして少しだけピンク』
『青、そして少しだけピンク』を観た。めっっっちゃ良かった!!!今年観た新作の中でも私的にナンバー1級。同性愛への差別や抑圧に対峙する純愛映画としても、そうした壁や長い別離を経ても互いに必要とし合う父親と息子の家族映画としても、10代の胸キュン青春映画としても、本当によくできてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 7, 2015
『青、そして少しだけピンク』は『生きていてすみません!』と並んで今年上半期の私的映画体験のハイライトになった。どちらも、離婚して息子とは別々に暮らす同性愛の父親が、諸々の事情から息子と久しぶりに生活することになり、隠していた同性愛を明かすことになるという設定が奇しくも共通してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 7, 2015
そして『青、そして少しだけピンク』と『生きていてすみません!』が素晴らしいのはそれぞれ同性愛への偏見に加え、前者では若者の身体醜形障害、後者では女性の就労環境での差別といった社会的なテーマを扱いながらも、すっきり生き生きしたドラマへ見事に昇華する映画としてのバランス感覚の冴え方。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 7, 2015
『青、そして少しだけピンク』これまでも同性愛への偏見や抑圧を描いた映画は観てきたけど、私的に本作ほど、そういうの本っっっっ当にどうしょもないし、意味ないわ、ってごく自然に、強く、本当に当たり前に心底そう思える作品はなくて。カップルとして本当に本当に素敵だったから。故に大成功映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 7, 2015
『青、そして少しだけピンク』同性愛に対する社会問題がベースとしてある作品ではあるけど、所謂社会派っぽい堅さはまったくなく、とてもとても観易い映画。思春期の息子が恋してる女の子と彼女が大好きなタンゴを踊れるように、オネエ仲間達とダンスを教えてあげるシーンとか胸キュン多幸感いっぱい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 7, 2015
4.『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』
うおおおぉぉぉぉ〜〜『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』、最高だったあああぁぁぁ!!!今回のフランス映画祭上映作のほとんどが今後の劇場公開も発表されてる中で本作は例外のようだけど、これはもう!!ぜひ!!劇場公開を!!もう一回観たい!!Excellentを三重折りしたいくらい最高だった!
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 26, 2015
『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』順々に結婚を迎えていく美しい4人の娘たちが選んでくる花婿は、毎度文化や宗教が大きく異なる外国人ばかり、そんな状況に反発を堪えつつ混乱するコンサバ両親と娘・婿たちの奮闘を、あるある異人種・異文化差別言動を絶妙に敷き詰めながら見事なハートフルコメディに。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 26, 2015
『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』終始笑い声に包まれた素晴らしい上映で、その多くが、誰しも身に覚えがあるはずの、悪気とは違えど特定の外国文化や異人種に対する蔑みに近い偏見が言動に出てしまった時に露呈する人間の滑稽さを拾ったもので、それを下品じゃなく健全な笑いとして描く絶妙さに惚れた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 26, 2015
『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』観る前はブラックコメディ寄りを想像してたけど、異人種の娘・息子の結婚にいがみ合ってた父親同士が、子どもの結婚に反対してる点で意気投合したのをきっかけに打ち解けてくように、人間らしさの滑稽な部分を温かく受け入れた作品で、最後は爽快で幸せな気分になれる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 26, 2015
3.『破裂するドリアンの河の記憶』
『破裂するドリアンの河の記憶』を観た。これは一度観てしまったら、その後ずっと記憶の中で忘れようのない特別な存在として、思い返す度に焦がれるような気持ちにさせる唯一無二の作品。今後何かの上映特集のリストでそのタイトルを見つけただけで一気に歓喜で心が満たされる作品。本当に最高でした。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』邦題の印象とは裏腹に、本当に美しい作品。どこまでも繊細にこだわり抜かれたカメラワークと示唆に富んだカット、作品の特徴でもある詩的なモノローグの多用に象徴される心惹かれずにいられない魅惑的な文学性…その全てが有機的に溶け合い、どこまでも詩情豊かな映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』青春純愛映画として側面がフィーチャーされる前半のパートでは本作の詩情豊かな美しさが特段炸裂してる。移ろいゆくものたち、姿を変えようとする町や海や周りの人々、そして2人の高校生の心 に向けられる繊細なカメラと言葉とピアノの旋律…ひたすらに理想的だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』後半では青春純愛要素とは完全に異なる主題に移行し、そんなあまりに大胆な構成が適用されてること自体が本作に対する魅力的だけどやっかいでもある謎として観終えた後も心に残り続ける。どこか腑に落ちない点があってこそ忘れられない・また観たくなる作品になる典型。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』上映後には本作が長編第一作目となるエドモンド・ヨウ監督に早稲田で映画製作を教えた安藤鉱平氏によるトークショーがあって、これも最高だった。川端康成に影響を受けたという『Love Suicides』や『金魚』 をはじめとした監督の短編も日本で再上映希望。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
安藤氏のトークショーでは、映画後半で印象的な社会による言論弾圧と本というテーマについてトリュフォー『華氏451』との関連性、マジカルリアリズムというジャンルの魅力、ウー・ミンジンとの素敵な関係と作風の違い等、『破裂するドリアンの河の記憶』の理解に近づける有り難いお話を沢山聞けた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』はトークショーでも話題になってたけど、目を見張るほどに出てくる女の子が皆とても可愛くて。特に前半の主人公、メイ・アンの可愛さはヤバかった。2人でバスに乗り逃避行しながら語られるモノローグ共々の美しさといったら… 可愛い女の子大好きな映画監督は最高だ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
『破裂するドリアンの河の記憶』を観て、連想されたのが『ほとりの朔子』だった。どちらも河や海のほとりで17〜18歳の少年少女が自分の進路や大人が仕切る世の中に向き合っていく作品で、純粋な青春映画の要素と幾つもの社会的な問題の描写を自然に同居させている。他にもリンクする点の多い2作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 19, 2015
昨日観た『破裂するドリアンの河の記憶』の記憶が未だ鮮明なまま心から離れてくれなくて、昼間から人知れず切なさに佇む。映像も言葉も本当に詩的で、奥深く、凛と美しい。「タイ語は響きが美しくて好き。雨の中の旋律のよう。」と囁く澄んだ声と2人を乗せたバスを包む黄昏の街の情景が忘れられず…。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 20, 2015
2.『生きていてすみません!』
『生きていてすみません!』を観た。超・超・超・超・最ッッッ高おおぉぉぉぉ!!!!こんなに思いっきり笑えて、頷けて、泣ける映画に出会えたなんて!!まさに監督の言うように“お腹にも響いて、頭にも響く映画”。イタリア映画祭最高!!もはや今年の私的ベスト映画。なんて喜ばしい映画なんだ!!
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
『生きていてすみません!』生まれた時から建築一筋の天才設計女子が、止めどなくはちゃめちゃな逆境の中で公営団地の設計公募プロポーザルに再起をかけるお仕事奮闘コメディ。中盤以降の強引なりきり寸劇がもたらす極上コメディ展開と社会批判の見事な融合は、それこそルビッチ『生きるべきか〜』級。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
『生きていてすみません!』中盤以降これでもかとぶち込まれる爆笑展開は会場を絶えない笑い声に包んだけど、才能もやる気もある女性が、むしろそれを意図的に隠さないと会社員になれないという、日本とよく似たイタリアの社会情勢・就労情勢をホントに痛烈に突きまくってて、爆笑しながら頷ける傑作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
『生きていてすみません!』主人公は生まれた時から建築の才能に恵まれ努力も続けてた設計才女なのに、女性という理由だけで建築士としては採用されない。だから審査に出す設計案を架空の建築士が作ったことにしてその助手として会社に入り込むという無茶ななりきり劇で映画は超面白くなるけど、深刻。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
『生きていてすみません!』監督のトーク“私たちは政治家を非難することで、私たち自身の問題や責任から回避していることがよくある。”“私たちは自分自身ではいられない場面がある、仕事等。能力があるのにそれを意図的に隠して仕事に就いた女性が自らを偽ることなく進んでいくまでを描いた映画。”
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
『生きていてすみません!』は女性の就労環境の理不尽さに加えて、ゲイであることを打ち明けられない父親や会社員など、様々な社会問題を爆笑上質コメディに昇華しつつ、明るく可笑しく強かにそれぞれの問題へ向かっていく姿は泣けるし、日本も一番大事なシーンで登場するのでロードショーして欲しい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) April 30, 2015
イタリア映画祭『生きていてすみません!』はイタリアで理不尽な就労状況におかれている女性が健気に明るく奮闘するコメディで、日本の会社社会に非常によく似た光景が描かれるから、日本の女性にも多いに共鳴する映画だと思う。序盤はほんのりビターなコメディだけど、中盤以降はこれでもかと笑える。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) May 1, 2015
1.『ボヴァリー夫人とパン屋』
『ボヴァリー夫人とパン屋』を観た。最高だ最高!!エロティシズムや官能とは対象そのものに宿るものでなく、そこに身勝手な快楽の地図を見出した自分の妄想の中でこそ存在しうる媚薬だと悟る末期的妄想中毒者にとって、これほど親密さと憧れを寄せることが出来る映画はガチでそうそうないと確信する。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 27, 2015
『ボヴァリー夫人とパン屋』宣伝の謳い文句には“官能的”とは出てるものの、枯れたおじさんが人妻に抱く妄想だし、そこにはそこまで期待できないだろうと高を括っていたけど、完膚なきほど覆されてしまった。ジェマ・アータートンのエロティックミューズっぷりとおじさんの妄想力あまりに完璧すぎた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 27, 2015
『ボヴァリー夫人とパン屋』男性が目の前の女性をうっとりスキャンしている時、どんな角度で、どんなズームをかけて、どういうところをじっくりと瞳に焼き付けているのかを、驚くほど正確に再現した(見透かした)カットの無限の連続で、それをあんなカッコいい女性監督が作ってるなんて堪らない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) June 29, 2015
『ボヴァリー夫人とパン屋』パン屋の飛躍妄想式のガチ恋を間抜けな恋愛物語として第三者から捉えたコミカルな視点と、彼が夫人を捉える時に脳を埋め尽くす抗いがたき魅惑的な性の憧憬としての映像とを、優しく優雅に溶け合わせ同居させている点が魅力大。可笑しいのに、心底その官能に共感してしまう。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 6月 29
他人の目から見た時に浮かぶ間抜けなラブストーリーと、思い込み過多な本人視点のめちゃガチうっとり恋情が同居する映画にありがちな、その双方による揚げ足の取りっこを採用せず、むしろ前者の視点でさえも、彼を本当に優しく見守るように肯定してる、『ボヴァリー夫人とパン屋』はそこが本当にいい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 6月 29
監督はパン屋の彼のキャラ付けとしてウディ・アレンのテイストを考慮したと話していて、アレンの近い設定の恋愛作品がそうした客観から主観に対する揚げ足取りでコメディとしての楽しさを増幅するのに対して、本作はそこは控えめにすることで、恋愛映画としてじっくり安心して楽しめるようにできてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 6月 29
ということで、個人的な2015年上半期のベストシネマはアンヌ・フォンテーヌ監督の『ボヴァリー夫人とパン屋』でした。本当に豊潤な恋愛映画。(これを“恋愛”と呼んでいいのかは人それぞれジャッジがかなり別れると思いますが、私はこういうのも恋愛だと思いたいです 笑)マイルドでエレガントで贅沢な映画だと思います。
とはいえ上位3作品はほとんど順位を決められないほど、どれも大大大好きな作品なので『生きていてすみません!』と『破裂するドリアンの河の記憶』も合わせて実質的には3本が同率1位といった感じです。本当にどれもそれぞれに離れ難い深い魅力があります。
最後にエルンスト・ルビッチ特集の感想から、生涯のベスト映画級となった個人的な心の奪われ度上位7作品の鑑賞メモ(鑑賞した順の掲載)をまとめて終わりとします。
ありがとうございました!
『結婚哲学』
ルビッチ『結婚哲学』を観た。無声映画。その分、鳴り止まないキュートで呑気な音楽の楽しさと可笑しさ、そしてそこに完璧にシンクロするドッタバッタ不倫未遂騒動のエンドレスリピート!人って強い、面白い。そして色恋の前ではみんなバカ。そんな自虐的笑いがくれる私が生きることの肯定。好きすぎ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 4月 26
『君とひととき』
ルビッチ『君とひととき』を観た。いやこれもうどうしろと!?いくらなんでも最高すぎだろぉぉぉラブすぎるだろぉぉぉぉ『結婚哲学』のリメイクだけど、お調子の良すぎる台詞と状況の割に能天気すぎるお唄の入った、(そしてよりコケティッシュになった)究極ラブコメ。クライマックスしかない80分。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 4月 26
『生きるべきか死ぬべきか』
ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』 を観た。終映と同時に、これはもう映画の究極だぁぁ!!!と心の中で叫びながら悶えた。自分が映画に対して寄せる色々な種類の希望がぜんぶ揃ってて、しかもそれらが本当に奇跡的に溶け合って、ひとつの映画になっていた。あまりに偉大。本当に出会えてよかった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 4月 28
『生きるべきか死ぬべきか』1939年のポーランドを舞台にしたラブコメで始まるけど、まもなくナチスの侵略でシリアスなムードを纏う。 それでも!!!それすら磨き上げたユーモアで全て覆していく。笑いの絶えない映画にしていく。しかもそんな映画を戦時中42年に製作!コメディ映画の真髄すぎ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 4月 28
ルビッチの作品はどんな強い男も美女には敵わない映画ばかりだから果てしなく信頼できる、とか言いたくなるけど、むしろどんな重大事由がかかってる状況でも、美女が現れるとごく簡単になびいて、それまで積み上げてきた色々を一瞬で忘れたフリが出来てしまう男性という生き物の信頼できなさがスゴい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 4月 30
『花嫁人形』
ルビッチ『花嫁人形』を観た。なんて可愛いすぎる映画なんだぁぁぁ最高すぎる!!ひたすら全編隙間なくキュート!!チャーミングな切り絵の紙芝居から飛び出たような世界一キュートでラブリーなお伽話。無声映画なのを完全に忘れさせる楽しすぎて尽きない会話のようなピアノ伴奏も最高!全部が大好き!
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 2
『花嫁人形』結婚不可避な状況に追い込まれた女性嫌いのお坊ちゃんが、女の子の人形を買って親族達に花嫁と見せかけようとする、というあらすじからは悲哀的可笑しさとユーモアが楽しい少し捻くれた映画を予想したけど、違った。すべてが健気でピュアなラブリーさに貫かれたまっすぐに楽しすぎる映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 2
『陽気な中尉さん』
ルビッチ『陽気な中尉さん』を観た。最高すぎたぁぁぁ!!完全無欠の完璧ロマンチックコメディ!序盤からちょっと陽気すぎだろwな素敵な中尉さんのおかげでウキウキ楽しく幸せだったけど、後半まさかのガチで良い話すぎた!まっすぐリアルに切なくて、それ故に本当の幸福感に包まれる極上の純愛映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 4
『陽気な中尉さん』裏切りに思えても仕方ない状態で恋人を取られた時にも「お別れね。とても楽しかったわ。」と一言残せるだけでいい子すぎるのに、新しい恋人にこんな服装や下着や音楽が彼を喜ばせるのよ、と教えて立ち去れるバイオリニスト・フランジーはラブコメ史上屈指の美しいヒロインだと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 4
『天使』
ルビッチ『天使』を観た。“洗練の極み”というタームでもって謳われる作品は数あれど、これほどまでにそれを体現し尽くした映画に触れたことは今日までなかった。すべての瞬間にクライマックスな魅力が宿った究極的に優美な恋愛映画。なんて研ぎ澄まされたロマンチック。ひたすらうっとり惚れ惚れ…。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 10
ルビッチ『天使』ディートリッヒ演じるマリアの美貌はあまりに圧倒的だけど、それ以上に彼女を天使たらしめる、あの誰の心もなだめるような声と短く端的な言葉に深みを与える間を持った話し方、仕草。すべてがエレガントで、この映画そのものを象徴してる。気品とは美しさを甘やかさないことだと知る。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 10
ルビッチ『天使』マリアに夢中になった紳士は“君は天使だ。”という感嘆を言い放たずにおれない。ただ、そうとう、そうとう、耐えてる。限界までそこは耐えてる。故に恋情に深みが感じられる。日頃とりあえず可愛いと感じれば瞬時に“マジ天使可愛い‼︎”の一言に変換して思考停止してる我を悔いた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 10
『私の殺した男』
ルビッチ『私の殺した男』 を観た。傑作。ルビッチ王道の陽気なコメディではないけど、スクリーンに映される人物たちの心模様や心情の動きに対する距離感や温度はまさしくなルビッチらしさに貫かれてる。それはどんなテーマを扱っても観客の心を作品の中に吸い込む特別な親密さ。ものすごく良い映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 14
『私が殺した男』のエルザはその前年に発表された『陽気な中尉さん』のバイオリニスト・フランジーと並ぶ究極的にいい子すぎる完璧ヒロイン。ラストシーンでの彼女のあの決断とあの眼差しにやられないはずがない。所謂反戦映画とは一線を画す魅力に満ち満ちた作品が、その傑作ぶりを決定的に示してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 14
『私の殺した男』 第一次大戦で勝敗を分かった敵対国同士の生き延びた元軍人と遺族・婚約者を同じ舞台で描く本作は、戦争が人々に残すものを哀しく描いた反戦映画ながらも、それ以上に国同士が敵対したからといってその国の国民同士までが憎み合うことの愚かさ・和解の魅力を強く示しているから貴重。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2015, 5月 14
人間の弱さと強さ、愚かさと素晴らしさは表裏一体であること。それを優美なフォルムへの徹底的な拘りをもってロマンチックな艶笑喜劇として描いたルビッチ。暗い人生や明るい人生なんてものは誰にもなく、何があっても笑える余裕と知性を持てたなら、それが私達に与えられた普遍的な希望と教えられた。
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ルビッチ特集、本当に全部良かったけど、特に『生きるべきか死ぬべきか』『陽気な中尉さん』『私の殺した男』 『天使』『花嫁人形』『結婚哲学』『君とひととき』という映画に今年の春こうして出会えことは忘れないと思う。特別な希望を抱けた3週間だった。
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