読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『イエスタデイ』は超最高の青春恋愛映画

f:id:nighttimepicnic:20161008021542j:image

10月1日からロードショー公開が始まった『イエスタデイ』は超最高の青春恋愛音楽映画で、ときめきに満ち満ちてるこの映画が、はっきり言って私は死ぬほど好きだ。

 

ノルウェーに住む高校生である主人公たち16歳の親友4人組(熱烈なビートルズファン)で、初めて人のバンドセットを勝手に拝借して「I Saw Her Standing There」をイントロから立ち上げていく高揚感、「Let It Be」の使い方の巧さ、4人で宿題してるふりして発売されたばかりの『Sgt Pepper's Lonely Heart's Club Band』のLPの封を開けて針を落としたときの興奮と衝撃感。理屈や理性を超えて最高だ!
主人公の男の子は転校生の高嶺の花的お嬢様に恋をしてしまいデートにこぎつけるんだけど、彼女が「歌詞が魅力的」と言うレナード・コーエンの良さがイマイチ分からなかったり、「『Rubber Soul』は「Michelle」以外全曲好き」と言ったら、「「Michelle」が最高なのよ」って言われちゃうあたり、このリアルすぎる噛み合わなさと初々しさがもう堪んない!

 

とはいえ、タイトルやチラシ、予告編からのイメージに反して、そこまで音楽音楽していない。(主人公たち親友4人組は正真正銘ビートルズの熱烈なファンであり、彼らに憧れてバンドを組むけれど、そこまで一生懸命練習してる風でもなく、ライブも実質ギリッギリ1回やったかやらないか的程度なもの)
それよりもストレートに青春恋愛映画として美味しいところは余すことなく描き上げた、実に普遍的でエヴァーグリーンな、友情&初恋を通して描かれる不器用で内気な少年の1年間の成長物語となっている。
それでも。いや、きっとだからこそ、この映画は本当に『Beatles (原題)』だ。本当に本当にビートルズ的だ。自分がビートルズに見出す魅力そのものが、この映画と完全に重なった。

 

そもそもなんで昔も今もわざわざあえて外国語の歌をすがるように聴いたりするのだろうか。
普段使っていない、詳しくない言語の歌を、わざわざ歌詞の言葉の意味まで調べて聴いたり歌ったりする動機は何だろう。
その問いに対する最もピンときて感動すら覚える回答を聞ける映画が個人的にあって、それが今年1月に日本でもDVDリリースされたスペイン映画『「僕の戦争」を探して』だ。
奇しくも、これも『イエスタデイ』と同じように60年代中期を舞台にしたビートルズマニアが主人公の映画だ。
主人公はスペインの小学校で子供たちに英語を教えている中年の教師で、1966年に映画の撮影(翌67年に公開された『ジョン・レノンの僕の戦争』)でスペインにやってきたジョン・レノンに会って話をしようと映画の撮影所に忍び込もうとするロードムービー
そんな彼の台詞にこのようなものがある。

 

「子供たちは、英語の授業ではなく、“I Wanna Hold Your Hand”で英語を覚える。君の手を握りたいという意味だ。歌を聴くことで、自分が感じていることを、他の誰かも同じように感じていたんだと知る。だから音楽は人を孤独から救うんだ。」

 

エンディングでは、「ジョン・レノンがスペインを訪れた1966年以降、ビートルズのLPには歌詞カードが付くようになった。」なんてあとがきも出てくる本当に素敵な映画だ。

 

結局のところ、わざわざ外国の歌を歌詞の意味まで調べて追いかける理由の大きいところはここにあるんじゃないかと思う。
自分と同じような気持ちや感じ方をしている人がいる・いた、ことを知ることが出来る、喜び、ときめき。
それは、普段の日常であまりそういった感情に出会えない環境で生きている者にとって、本当にかけがえのない喜びだ。
それに比べたら言語の違いなんて取るに足らないし、むしろ身近な周りでは知ってる人しか知らない秘密の暗号みたいで素敵だと思う。
ノルウェーの映画である『イエスタデイ』の主人公たちも話し言葉はノルウェー語で、それでもビートルズの歌に夢中なところがいい。

 

ただ、私が本作で一番推したいところはそこではなくて、もっと普遍的な青春映画としての部分。
この映画は基本的に主人公の男の子が学校の試験で書いている小論文で綴られる内容を、回想ドラマとして再現していくスタイルを取っている。
その中で、「(いつも一緒に遊んでいる4人は親友同士で、とても仲が良かったけど)それぞれ誰にも言えないことも増えていった。」というモノローグが入る。
そこから本作は、その4人のそれぞれが打ち明けられないことを映し出していくわけだけど、実はその多くは誰もがそこそこ経験するようなことで、とりたてて特別なことではない。
で・も・だ・か・ら・こ・そ、この映画は圧倒的に魅力的だ。
だって、もう分かりすぎる。
「お前は(かつての)俺か!!?」的シーンの無限連続。
だから逆に言えばまぁ平凡だし、健全。
でも、いくらなんでもそれを瑞々しく描いてくださっていすぎる。
自分は孤独じゃなかったんだって、これを観て思える。
だって、あの頃は誰にも言えない自分だけの秘密だったけど、こんなにもそんな自分みたいな行動を繰り広げる少年を目の前にしてる。分かる。分かりすぎる。
自分て変わってると他人からは言われて続けてきたけど、いやいやいやもうめっちゃ平凡じゃん、だって外国の映画の中ですら超分かる人が出てくるんだから。
そういうときめきと幸福感。
そういうものに1秒も途切れることなく埋め尽くされている映画、それが自分にとってのこの『イエスタデイ』。
とりわけ初恋映画としてはもう本当によすぎる。めちゃくちゃ胸に突き刺さるときめきと切なさとリアリティー。
個人的には『あの頃ペニー・レインと』や『アクロス・ザ・ユニバース』や『シング・ストリート』よりも超超超超大好きな青春恋愛映画です。