2018年11月の私的シネマランキング (No.1 ~ No.17)
私が11月に映画館で鑑賞した新作映画について、個人的によかった順番に並べて感想をまとめました。
11月はMOOSIC LABで短編作品を含む数多くの作品を観たこともあり、37作品を観ました。
出来ればMOOSIC LABのエントリー作品はそれだけでひとつにまとめたかったのですが、11月中に全部を観ることが出来ず、未鑑賞2プログラムを残した状態で、今となってはちゃんとチケットを入手して観られるのか自信がなくなってきつつある状況。特にHプログラム…。出来るだけがんばりたい。
今年のムーラボの印象は、現在までのところ、昨年の私的ベスト2本『少女邂逅』や『聖なるもの』級の異次元レベルの傑作には出会えていない印象です。『なっちゃんはまだ新宿』と拮抗するかな、という観応えのものが『下鴨ボーイズドントクライ』と『無限ファンデーション』の2本。だけど、今年は短編のレベルが総じて高めなので、とても楽しめるムーラボになっている印象。
ムーラボは作家が若いので、必然的に青春映画が多くなってきます。それらを観比べる中で、優れた青春映画に共通する要素が実感として分かってくるようになる気がします。
例えばそのひとつとして、「今という瞬間に注がれる、切実なる喪失の予感」というものがあるのではないかと感じています。
『少女邂逅』や『なっちゃんはまだ新宿』に充満していて、篠田和典監督の前作『左京区ガールズブラボー』に薄かったものがそれではないかと思います。
『左京区ガールズブラボー』にも青春の喪失が描かれていましたが、そこまで切実なそれではなくて、まだまだモラトリアムを謳歌する大らかさが全編にあり、それがまた作品の魅力でもありました。
篠田監督の今年の新作『下鴨ボーイズドントクライ』は、遂にそれを手に入れた、というより、全編が「今という瞬間に注がれる、切実なる喪失の予感」そのもので出来ている、凄まじく堪らない観応えでした。
前作は魅力の半分がセンスで構成されている印象も受けましたが、今回はそこも全く違って、センス描写が小物演出の域を出ないほど、物語の本質描写に力が注がれていて、それに大成功している印象。というわけで、現時点で個人的なムーラボ2018のベストは『下鴨ボーイズドントクライ』です。
前置きが長くなりましたが、以下11月に観た新作の私的ベスト1位からです。
1.『下鴨ボーイズドントクライ』
『下鴨ボーイズドントクライ』これはもうどうしたらいいんだッ!?ってくらい最高すぎるし、大大大好きすぎるし、大傑作!!!胸キュンで死にそうになった。前作『左京区ガールズブラボー』の魅力を完璧に携えながらも、映画として格段の大進化を遂げてる。私にとっては今年最高の映画体験というしか。 https://t.co/GAZKGRKmgW
— SunCityGarden (@SunCityGarden) November 18, 2018
『下鴨ボーイズドントクライ』冒頭の献辞で「『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』になりたいと言っていた頃の君に捧げる」とあるように、前作に続きGHTGテイストは大健在だけど、今回はそこに『アバウト・タイム』(もち主人公の部屋にポスターあり!)の要素が掛け合わせられてて胸キュン度の限界値超えた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
『下鴨ボーイズドントクライ』まさに『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』× 『アバウト・タイム』と形容できる、インディロックやミニシアター系映画への愛情を常備しながら、別々の未来へ歩んでしまった最愛の彼女との関係を取り返す為、過去へのタイムトラベルを繰り返す大学生の甘酸っぱさ全開超奮闘劇。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
『下鴨ボーイズドントクライ』前作でも最高に高まったインディロックや映画愛を示す小物演出が今回も絶妙で、ホイットニーのTシャツや『レディ・バード』のポスター等無数に出てくるけど、部屋に貼られた『アメリカン・スリープオーバー』のポスターが映った瞬間は流石に泣けた。最高すぎだろズルい。 https://t.co/oZ36DORaqY
— SunCityGarden (@SunCityGarden) November 18, 2018
『下鴨ボーイズドントクライ』インディロックに対して親しみの薄い観客にも全開で魅力を訴え得る、完璧な魅力で敷き詰められた青春恋愛映画としてのストレートな秀逸さが光りまくってる。恋人との幸せな日々と後悔の瞬間を幾度もリピートしながら軌道修正に奔走する姿は極上にエモくて共感が尽きない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
『下鴨ボーイズドントクライ』全編に渡って監督のインディロックに対する愛情を示しつつも、最も決定的な場面で「こんなインディロックをいつまでも聴いてるから駄目なんだよ。私たちもう22だよ。」とヒロインに切実に吐かせてしまうところが本当に堪らないし、そこが真に作品と監督を信頼できる所以。 https://t.co/qIwW4U8f1Z
— SunCityGarden (@SunCityGarden) November 18, 2018
『下鴨ボーイズドントクライ』田中怜子演じるヒロインがあまりに可愛らしすぎて儚い印象すら醸し出してるところが、就活で京都から東京まで忙しなく移動する物語設定や、彼女との沢山の幸福な思い出を走馬灯のように駆け巡らせていく語り口に大変マッチしていて、瞬間の儚さと尊さ描写に大貢献してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
2.『カランコエの花』
『カランコエの花』を観た。想像を遥かに越える大傑作。これは観れてホントによかった。登場人物たちの所作はもとより、その間合いの一瞬一瞬までもが極限のリアリティを宿していて堪らない。10代の無邪気さとそれ故の残酷さ、それでも確かな人間の温もりを完璧に体現した演技とカメラがあまりに秀逸。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『カランコエの花』今年最高の学園映画であり、今年一番大人が観るべきティーン映画だと思う。LBGTという言葉の認知は広がった今にこそ多くの人に問い掛け得る、身近な生活の中での本当の実感の在り方と接し方の難しさを、瑞々しい演技が連なる学園映画を舞台に、真にリアルかつ正直に描ききった傑作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『カランコエの花』LBGTに限らず、自覚としては差別意識が無くても、様々な価値観を抱く人々が重層的に関わり合い共存している身近な実社会において、当事者の目に写る自分は果たして本当にその自覚に従った行動が取れているだろうかと、ハッとする自問と気付きに導かれる本作の観応えはあまりに尊い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『カランコエの花』主人公・月乃のきめ細かく秀逸なキャラクター造形と、それを極上のリアリティで体現する今田美桜とそれを引き出す共演者たちの姿は、観客の意識も当事者の一人として物語の中に引き上げ、共に彼女と悩ませる圧倒的な力がある。そんな引力が40分間の中に濃縮された、贅沢な映画体験。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『カランコエの花』まさかここでエンドかよと驚愕する、衝撃のエンディングが観客にもたらす成果に感嘆。このエンディングを前に、短編だから長編並みの重量や観応えは期待できないという浅はかな見積りは決定的に崩れ去る。観客に最も多くを与える為に40分という長さが選ばれたことの説得力に痺れた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
3.『The Witch / 魔女』
『The Witch / 魔女』を観た。超圧巻の観応えに余裕で年ベス級の大傑作。親友や家族とのかけがえのない日常を巧みに描いたハートウォーミングな青春映画から、極上の爽快感とクールネスが炸裂しまくる超洗練バイオレンスアクション作へとあまりに華麗な変身を遂げる、完全無欠のエンタメ作。最強すぎ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『The Witch / 魔女』今回、のむコレで上映中の本作は『第一部 転覆』というサブタイトルがついてるように続編が待ち受けているけど、これ程に全方位無敵な完璧エンタメ大傑作、次回作が届く前にロードショー上映しない手などあるのだろうかと思わずにいられない。どう考えても限定上映の玉じゃない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『The Witch / 魔女』2018年の私的ヒロイン・オブ・ザ・イヤー第1位は、本作のジャユンで決定した。ホンッッットに極上クールネスそのもの。バイオレンスシーンからここまでクールな爽快感と高揚感に満たされたことはかつて無かった。洗練を極めるアクションと不敵すぎる彼女の表情に、私は昇天した。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『The Witch / 魔女』本作を大傑作たらしめているのは、クライマックスを飾る極上クールなアクションシーンは元より、そこに至るまでの多くを占める、親友との素敵な友情やかけがえのない家族愛を瑞々しく描く日常パートの秀逸さにある。アクションが登場する以前に最高のガールズムービーとして成立。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『The Witch / 魔女』ヒロインのジャユンは当然に最高最強だけど、私的には彼女の親友でいつもやかましい同級生ガールが超絶愛おしい。あのやかましさが幾度ジャユンを救ってきたかと思うと泣ける。ほんと最高のガールズムービー。続編が成功するかの鍵は彼女を幸せに出来るかに懸かってるとさえ思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『The Witch / 魔女』クライマックスの空前クールなバイオレンスアクションは確かに目玉だけど、そこに至るまでの『サニー 永遠の仲間たち』にさえ肩を並べると思わせる、ヒロインと親友による友情青春物語が堪らなく素敵。正直このままアクション映画にならなくても最高に満足だと思いながら観てた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
4.『無限ファンデーション』
『無限ファンデーション』大傑作。即興演技だからこそ引き出し得る極限リアルな緊張感と生々しさこの上ない感情の発露を、途轍もなく全開に活かしきったシーンがひたすら連なっていく中盤以降は、身体の芯が震える程の最上級の映画的快感に満ち満ちた、まさしく圧巻の観応え。青春映画の新たな金字塔。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『無限ファンデーション』中盤以降はひとつひとつのシーンそのものが凄すぎて、極上すぎて、目の前でいま繰り広げられているシーンの観応えが物語全体を超えてしまっているし、そんなシーンばかりが次から次へとより濃度を高めながら止まることなく続くものだから、映画的快楽で身体中が支配されてた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『無限ファンデーション』脚本なしの即興演技による本作を大傑作と成らしめているのは、紛れもなく南沙良を筆頭とした超迫真の演技を見せる俳優達だけど、それも即興演技故の魅力が極限に活きる場面ばかりをこれでもかと用意した監督の目論見あってのもので、その関係性に劇映画の究極を見た気がした。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『無限ファンデーション』大人から見ても考え込ませられる、たった一言発するにも極度の緊張と衝突する感情に震える場面が、即興演技による生々しい感情を宿した迫真の演技によって次々と連なっていく観応えからは、まるで濱口竜介監督がミドルティーンの青春映画を撮ったかのようだという感慨を受けた
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『無限ファンデーション』彼女をそこまで覚醒させた他の共演者や監督あってこそとは思うけど、それにしても主人公を演じる南沙良の爆発ぶりは圧巻。多面性が極めて高い主人公の複雑なキャラクターを、多彩な表情を駆使して体現しきっているし、クライマックスの彼女あってこそ、本作は大傑作に化けた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『無限ファンデーション』超圧巻の迫真演技の他にも多角的な魅力が光る。服飾デザインに夢中な主人公が衣装係として演劇部に入る設定も活きてるし、母と娘の物語としても最高に素敵だし、瑞々しい音楽のみならず演技でも泣かせる西山小雨を軸としたミステリアス要素も物語に魅力的な厚みを与えている。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
5.『ヴァイオリン・プレイヤー』
フィンランド映画祭『ヴァイオリン・プレイヤー』観た。とんでもない大力作。物語の舞台を不倫相手の音楽院生が初の大ステージを迎えるコペンハーゲンに移してからの途轍もない観応えときたら。ここまで緊張感に満ちた迫真の音楽劇は『セッション』以来。それをこんな濃密人間ドラマの中でやられたら!
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ヴァイオリン・プレイヤー』交通事故によって強い未練を残しながらも華型バイオリニストを引退した音楽院講師の中年女性が辿る、人生の情熱を懸けた戦いの日々を、途轍もなく重層的に多角的に描き上げた傑作。不倫劇という次元を超えて幾つもの魂の叫びが蠢き、ぶつかり、反射し合う、後半の凄さよ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ヴァイオリン・プレイヤー』前半はまだ、鳴り渡るバイオリンの旋律と洗練されたカメラが美しい、叙情的で官能的な学園不倫劇の範疇ではあるけど、まさか後半でここまで重層的で奥行きに満ちた感情ドラマと『セッション』級の緊迫鬼トレ音楽劇を合わせ技で繰り出してくるとは。精魂持ってかれ切った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ヴァイオリン・プレイヤー』指の怪我で2度とバイオリンを弾けない音楽講師と、彼女と恋愛関係を持つ立場も年齢も異なる3人の男達が、コンサートを控えた厳しいリハーサル週間に一堂に会し、4人それぞれの信念や思惑や情熱や後悔が重層的にぶつかり、交差する姿とそれを演奏に重ねる描き方が超絶品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ヴァイオリン・プレイヤー』夫婦の関係が徐々に崩れていく過程や、そこに夫側の献身が関係すること、美しい映像やカメラと人物の距離感等から『かごの中の瞳』を連想する時もあったけど、後半これでもかとその次元を超えてきた。『ワンダーランド』は好みど真ん中だけど、本作の圧巻さには抗えない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
6.『ワンダーランド』
フィンランド映画祭『ワンダーランド』観た。新恋人を選んだ旦那に捨てられた中年女性が、孤独なXmasの慰めに親友と訪ねた田舎のコテージで、魅力的な男性と出会い愛を交わすようになるけど、そこへ元旦那が尻尾を巻いて表れることで堪らん空間が爆誕する、ビター故キュートな大人のラブコメ。大好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月3日
『ワンダーランド』完璧な夫だと思っていた旦那に新恋人出現で突然捨てられ、失意を見かねた親友の誘いで外に繰り出すと新しい恋に会えたけど、そんなとき元旦那が戻ってくるという人生のままならなさに直面する中年女性のビターな奮闘を軽妙かつラブリーに描いてる点で『輝ける人生』を彷彿する佳作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月3日
『ワンダーランド』元旦那への捨てられない未練と旅先で出会った新しい恋との間で揺れる50代女性の葛藤と、彼女が宿泊中のコテージを運営する30代前半の夫婦が迎える危機を、前者はビターながらラブリーに、後者はシリアスに、人生の決断に対する年齢による温度差を見せながら並行して描く手腕が絶妙。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月3日
『ワンダーランド』元旦那を引きずって傷心中のはずの主人公が同じコテージに宿泊中の男性客とデキちゃってることが、コテージを運営してる若い嫁にバレた時、夜遊び狂いな親友と合わせて「あなた達、その歳でなんてことしちゃってるの!?」って言われるシーンが最高に好き。そんな50代、とても素敵。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月3日
『ワンダーランド』中年女性が映画に出てきても脇役が多いことが、本作を作る動機になったと監督が話したように、主人公のヘレナの性格がとても魅力的に描かれていて、性別や年代を超えて沢山共感。2人の男の板挟みに「体が2つあればいいのに」とか真剣に言ったり、正直な自分を見せる瞬間がキュート。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月3日
7.『月極オトコトモダチ』
『月極オトコトモダチ』ムーラボに新風を吹き込む、大人のエレガンスを纏った極上ラブコメ。レンタル友達×男女の友情という、面白さ鉄板なテーマを徹底的に活かしきった、溢れ出るキュートさと世の男女には堪らない切実なテーマとを完璧に両立してみせた、誰もがハマれるちょっと大人の青春コメディ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『月極オトコトモダチ』説明文の時点で面白さ確実だし、TIFFは即完だしで期待値が凄かったけど、あっさり優雅にそこを余裕で超えていた。誰もが心を許せるような素直で健気な主人公のキャラ造形が本当に見事で、あざとさに陥りがちなこのテーマを実にキュートかつ誠実に描き上げることに大成功してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『月極オトコトモダチ』真面目なアラサー女性×下世話記事を求められるwebメディア勤務×レンタル友達×男女の友情、という設定と軽妙に核心を突く描写で既に完璧なので、そこにさらに音楽を掛け合わせる苦労は見て取れたけど、そこを安易路線で一切逃げず正面から切り込む姿が主人公と一緒で好感度高い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『月極オトコトモダチ』編集長からの圧力で、レンタル男友達と一夜を共に過ごす検証をせざる得なくなった時の、あくまで友達同士として自然なホテルへの誘い方(不自然不可避)を主人公が必死に予行練習するシーンがあまりにキュートすぎて沸いたし、最終的に彼女が下した決死故の模範解答ぶりに痺れた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『月極オトコトモダチ』シュチュエーションの巧妙な仕掛けにより、定番のありがちを見事に避けて新鮮なクライマックスシーンを創出させてる点も見事。あの張り詰めた空気の中で唯一呑気な奴が放つ一言「音楽とレンタル友達の違いは何ですか?」の絶句ものの暴力的直球さが、本作を特別な作品に変える。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
8.『ガンジスに還る』
『ガンジスに還る』を観た。人生の終幕の迎え方を物語のテーマにしてるものの、重苦しさや難解さとは対極にある、穏やかで軽妙なムードと愛らしいユーモアが終始心地よい、稀有で尊い映画。まさに主人公と一緒に私自身も解脱へと辿る心の解放に身を委ねていた、癒しと再生の100分間。大いに期待以上。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ガンジスに還る』死期を見据えた主人公が、理想的な人生の終幕を迎える為のホテルに入居し、インドの美しく壮大な生活風景や同居者や家族とのやり取りを経て人生の意義や美を今一度更新していく映画という点で、ハリウッド装飾を廃した『マリーゴールドホテル』シリーズという感慨があり私的ドツボ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『ガンジスに還る』物語のテーマから重苦しさや難解さも覚悟したけど、全く杞憂に終わる観易さと心地よさだった。解脱とは波として流れていた人生が海に還る事と喩えられるけど、突き進むはがりの日々に人間らしさの先細りを感じてた私にとって、本映画体験こそ人間らしさの海に舞い戻るひと時だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
9.『内回りの二人』
『内回りの二人』を観た。めちゃくちゃ大好き。山手線の終点・大崎駅から渋谷まで一夜を共に歩きながら、お互いをよく知らなかった男女が柔らかく打ち解けていく姿を、しっとり優美に描く様は、まさに東京を舞台にした『ビフォア・サンライズ』。こういう作品こそが、最高にロマンチックだと私は思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『内回りの二人』オープニング映像が監督の前作のそれを彷彿させる、洗練されたビートとクールな映像で高まったけど、本編でまさかこんなにシックな甘美さがしっとり心地よく心を包むロマンチックムービーが来るなんて。初めて『ビフォア・サンライズ』観た時と同じときめきが胸に溢れて堪らなかった。 https://t.co/9T1LrfXexj
— SunCityGarden (@SunCityGarden) November 25, 2018
『内回りの二人』去年上映された『KILLER TUNE RADIO』でも中盤のクライマックスとして炸裂していた、夜の街を背景に女の子を音楽に乗せて踊りながら走らせる描写の巧さが本作でも健在で、さらに今回はそこに繊細なセンチメントがエレガントに讃えられていて、こんなの好きになるしかないって思った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『内回りの二人』東京の夜を山手線沿いに歩き明かしながら、互いに見出していた特別な絆とそれぞれの今を穏やかに明かし合う男女の一夜。そこにある繊細な心の揺れや小さな決意を瑞々しく描く眼差しが素晴らしい。そんな甘美で澄んだ物語をWhoopsの極上のキラーチューンで締めるなんて完璧さに唸った。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
『内回りの二人』1回しか話したことないけどアイドルとして好きだった女の子に数年後ばったり会って、相手も自分を覚えてるなんて夢物語のはずなのに、2人の心情をきめ細かく丁寧な描写で描き続けることで揺るがない説得力に貫かれてるし、後ろ向きアイドルという設定もそこに絶妙な効果を与えている。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月25日
10.『ギャングース』
『ギャングース』凄すぎた。全編に渡って超絶圧巻の観応え。予告編からは完全に想定外の、尋常じゃない切実感と広がり続けるスケールに息つく暇もないほど飲み込まれた。過酷な逆境と死闘する青春映画としての切なる熱さ、闇社会の恐ろしくリアルな描写、バオレンス描写の迫真さ、どれも超一級の映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月26日
『ギャングース』映画祭でこれでもかと予告編を見せられたけど、実際に観た後では納得するしかない。ここまで破格の観応えを緻密に埋め尽くした傑作なら、そりゃ配給会社もあんな猛プッシュするわと。若さと勢いまかせの窃盗劇に全く留まらない、大人だから刺さる切実さも充満した極上サバイバル映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月26日
『ギャングース』予告編では見えてこなかった、彼らがヤクザからの窃盗を生業にせざるを得ない背景が、極めてなシビアなリアリティを伴って映画全般を通して描かれていく。社会の暗部を克明に告発しながら、それを極上に刺激的なエンターテイメントに昇華していく手腕があまりに秀逸で圧倒されっ放し。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月26日
『ギャングース』昨年の入江監督作『22年目の告白』も観応えがあったけど、熱量の密度、切実な社会告発性、エンターテイメント映画としての強度、どれをとっても桁違いに秀逸。闇社会のバイオレンスを破格のスケールとエネルギーでハードボイルド描写しきった映画としても『渇き。』を凌駕する観応え。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月26日
『ギャングース』予告編からノリ重視のチャラめな青春サバイバル劇を想像してたけど、そんなものとは正反対の、究極のシビアさをシリアスに見つめ続けるド真摯なサバイバル映画で驚愕した。そんなド級のシリアスさを重苦しさには留めず、全てを切実な熱量として疾走感ある観応えに昇華してるのが凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月26日
11.『ボヘミアン・ラプソディ』
『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。これはもう完全に世間の評判通りで間違いなしなんだと、オープニングのたった5分間だけで確信に至らしめた映画としての圧倒的な力に驚き、歓喜した。クライマックスのライヴ20分フル再現が話題だけど、私的には仮にあれが無くとも変わらず大満足だったはずと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月23日
『ボヘミアン・ラプソディ』フェスやバンドに夢中になったことがある人なら即ときめき必至なライブエイド当日の朝の極上優雅な描写で幕を上げて、クイーンの歩みを経たクライマックスでもう一度そこへ戻ってきた時に、冒頭の優雅さと対照に彼らが抱える血の通った重みと緊張感を引き立てる構成が見事。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月23日
『ボヘミアン・ラプソディ』 実在する伝説のバンドの歩みを生々しく刻みつけたというよりも、まるで完全なフィクションバンドの物語を観ている感覚に陥るほど、華麗で滑らかな語り口で進行する王道の青春×バンドもの映画だから、クイーンに思い入れがない人でも余裕で楽しみ尽くすことが出来ると思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『ボヘミアン・ラプソディ』 テンポのよさと軽妙極める語り口で、とにかく安心して楽しめる観心地だけど、その異様にストレス皆無な安心感は、この物語の時代に繁盛した華やかなロックンロール音楽やその文化が、現代ではもう過去の遺物故のおとぎ話的フィクションとして捉えられ得るからかもと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『ボヘミアン・ラプソディ』を観てクイーンの音楽にあらためて惹かれた度以上に、3年前に劇場上映された『JIMI:栄光への軌跡』を観て以来すっかりジミヘンの大ファンになってしまった私がいるので、アウトキャストのアンドレ・3000が完璧にジミヘンを演じきった当作もこの機に再評価されたら嬉しい。 pic.twitter.com/BY6uhesUWf
— SunCityGarden (@SunCityGarden) November 24, 2018
『ボヘミアン・ラプソディ』で描かれるフレディを苦悩させる境遇は現代的メッセージも孕み得る適切な描写だけど、語り口が軽妙で洗練されすぎてる故、切実感は薄め。その点『JIMI』ではジミの内に籠りがちな人柄故の孤独感や苦悩が、リアルで親密な痛みと共に身体に入り込んでくる故もっと心を許せる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
『ボヘミアン・ラプソディ』確かにクイーンの物語だけど、私的にはそれ以上に70'sのパワフルで愛のパワーに満ちたロックバンド音楽とそれに付随する文化全般へ捧げられた、2010年代からの最上のラブレターと謝儀という印象。全ての瞬間に敷き詰められたラブリーなリスペクトはそのスケールに達してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月24日
12.『仕立て屋 サイゴンを生きる』
『仕立て屋 サイゴンを生きる』観た。ベトナム伝統ドレスの高級老舗のお嬢様として、親に逆らい1969年の洋装文化を謳歌する我儘ガールが、2017年へのタイムスリップを経て繰り広げる、現代の服飾業界での奮闘とアル中おばさんに落ちた未来の自分との対峙を生き生きと軽妙に描いた青春コメディ大秀作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『仕立て屋 サイゴンを生きる』ミュージカルタッチでノリノリのガールズムービーを繰り広げる序盤の1969年パートはあまりの軽妙さに度肝を抜かれたけど、2017年へのタイムスリップ後には洗練されたモダンな青春コメディに一変するのが、主人公の内面の変化とリンクしていて巧妙で、期待以上に大満喫。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『仕立て屋 サイゴンを生きる』伝統的民族ドレスメーカーと現代の洋服メゾンの2つの現場を舞台に、タイムスリップ演出を絶妙に振り撒きながら展開する奮闘青春コメディの楽しさに加えて、そこに落ちぶれて廃人化していた未来の自分との対峙描写をじっくり入れ込むことで、作品の深みがグッと増してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『仕立て屋 サイゴンを生きる』中盤までだいぶ軽快なノリで展開してきたラブコメや青春コメディでも、途中で予想外のシリアスで奥深い局面が明かされ、一気に強く作品に惹き込まれることがあるのがアジア諸外国のヒューマン系コメディ映画の大きな魅力だと思ってるけど、本作もまさにその系譜だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『仕立て屋 サイゴンを生きる』超我儘だけど上昇志向が強くパワフルなお嬢様ガールの主人公が、アル中の半廃人で美貌も失くしていた未来の自分との共同生活の中で交わす、本音の会話や打ち解けながら各々が変わっていく描写が大変見事。その点は『あなた、そこにいてくれますか』よりずっと良かった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
13.『1人のダンス』
『1人のダンス』紹介文から想像していたものとは遥か比べ物にならない素晴らしさで、完全にノックアウトされた。大激戦間違いなしの短編部門の中でもシンプルに観応えで言えばグランプリ候補の一つではと思う。誰もを取り込み、共に熱狂させ得る、澄んだ熱さとそこに至るまでの丁寧な過程描写が光る。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
『1人のダンス』冴えないMV監督を悩ませる問題とブレークスルーに至るまでを、親密な視点から丁寧に機微を描き連ね、徐々にドラマチック展開を盛り立てながら最高に熱いクライマックスへと導いていく運びの巧妙さが大変魅力的で、極めてパーソナルな物語でありながら長編作並みの観応えを創出してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
『1人のダンス』繋ぎの仕事感覚で取り組んでいたマイナーアイドル撮影の仕事場を逃げ去るときに、芯の強い少女から「今までで一番真剣にやってくれた監督でした」の一言をくらった後のカメラ演出と主人公の演技が秀逸で、あそこでこの映画は勝ったと思ったし、その後は絶えず最高の瞬間しかなかった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月18日
14.『テルマ』
『テルマ』を観た。本作をホラーと形容する気が知れない、ミステリアスだけど青春映画としてはど真ん中な力作。ダークファンタジー要素もあるにはあるが、観どころの中心はテルマの魅力的なキャラクター造形と多彩な心理描写の巧みさ。大人になるための人生最初の大選択を描いた普遍的な青春ミステリ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月10日
『テルマ』両親にも信仰にも従順で生真面目なグッドガール・テルマが、呪縛を取り払い運命を切り開く、という青春物語の中でも最も大胆で重厚なテーマに自ら手を掛けるまでの過程を、健気で初々しい夜遊びや恋愛体験を通して、ダークファンタジー越し故の多角性を駆使しながら丁寧に描いてる点が魅力。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月10日
15.『暁闇』
『暁闇』今作が映画初監督の阿部監督の次回作や今後創られるであろう映画達が、早くも楽しみになってしまう、絶対に観たくなってしまう、そんな未来をも焦がせる尊い映画体験。圧巻の主演3人も含め、珠玉のポテンシャルを示した伝説的最初期作として、ムーラボの枠を越えて近い将来回顧されると思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『暁闇』それぞれに危うい境遇を抱えている3人の中学生の、決して言葉にはされない・出来ない、それぞれの切実さを本当に親密なリアリティを保ち続けながら、全編に渡ってきめ細かく映し上げる。1人1人の群像劇として描かれる序盤から惹き込まれたけど、それが3人の物語になってからはもう完全に降伏。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『暁闇』ファンタジーもないし、エンタメ性の強い物語展開は控えめだけど、それらを除いても『少女邂逅』に惹かれ打たれた人は、今作も刺さるはず。人知れず悩ましい背景を抱えた者同士だからこそ創り出せる特別な距離感を、凛とした美しい映像で繊細に捉え上げていく。まさに尊い邂逅が描かれた作品。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『暁闇』言葉少ない3人の想いをスクリーンいっぱいに広げ続けていく主演3人が本当に素晴らしいけど、特に越後はる香演じるサキが圧巻で、何度もグッときてやまなかった。さり気なく何てことない「こんばんは。」の一言だけで、心から切ない幸せが溢れ出した。それだけの空気感を創り上げる監督が凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
『暁闇』中学生や高校生を主人公にした映画で最重要なのは、彼らが何に切実さを感じていて、そのことが彼らにどんな行動をさせるのかを、いかにリアルに映し出せるかだと思う。本作はその点で最優秀の先端を成す作品。切実さに対して、親密であり誠実。本当の優しさとはそういうだと気付かされる映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月17日
16.『ショパンの姉妹』
『ショパンの姉妹』まさかの超ダークホース。斬新さと普遍的な面白みが完璧に融合した堂々の大力作。ショパンのクラシック音楽をBGMに繰り広げられるのは、なんとも規格外のコテコテな歌舞伎調コメディ。舞台は楽器屋のフロアのみ。形式は山内監督の『テラスにて』を彷彿させるが、斬新さが半端ない。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『ショパンの姉妹』ショパンの優雅な旋律と、歌舞伎風のコテコテな台詞回しとがこんなに華麗にマッチングするという発明を完全活かしまくってることがまず凄いし、ショパンの末裔娘とその付き人を演じる2人の演技の圧巻なやり切りぶりが超絶爽快で堪らなく素晴らしい。堂々の最優秀主演女優候補では。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
『下鴨ボーイズドントクライ』と『1人のダンス』の長編級の最高の観応えに昇天しきり、正直お腹いっぱいになっていたところ、『ショパンの姉妹』の全く別次元から攻めた、あの規格外この上ない、とんでもない圧巻のやらかしコメディをくらって、今年の短編部門は本当にヤバイなって思った。強すぎる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月19日
17.『心魔師』
『心魔師』観た。期待以上の面白さ。サイコホラーと銘打たれているものの、心に影のある一匹狼の刑事が奇怪な連続殺人を追う内に、ファムファタールな少女との出会いにより自らもその闇の一端となっていく構成や観応えは正統派サスペンスタッチで、すんなり入り込める。説得力のあるオチも含め大満喫。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『心魔師』見るからに怖い闇が潜んでそうな迷宮仕立ての屋敷への潜入捜査が持ち味の、サイコホラー要素を携えたサスペンスである点は『クリーピー』が彷彿されるし、あの映画が好きならハマると思うけど、あれよりソフトタッチで叙情的な作風だから、過激なのが苦手な人には一番ちょうど良いホラー感。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
『心魔師』闇を暴くはずの刑事がファムファタール的な美女と出会って自らも破滅の危機へ向かう、というフィルムノワールやサスペンス劇の王道を、印象的な入居者達が同居する怪しくも美しい箱庭的お屋敷病棟を舞台に、清らかなタッチを讃えながら描くことで、ホラー描写にも風情が宿ってる点が魅力的。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年11月4日
私的18位から37位まではこちらを。
・MOOSIC LAB 2017の感想まとめ