2018年10月の私的シネマランキング (No.1 ~ No.12)
私が10月に映画館で鑑賞した新作映画について、個人的によかった順番に並べて感想をまとめました。
10月は東京国際映画祭の勢いも借りて、26作品を観ました。
なお、ジョージア映画祭で鑑賞した『微笑んで』は、厳密には2013年の大阪ヨーロッパ映画祭で日本上陸を果てしていますが、関東の映画館では今回が初上映だったかと思うので入れています。
加えて、10月の新作以外でのトピックは念願中の念願だった、ミカエル・アース監督の前作『サマー・フィーリング / この夏の感じ』を遂に、遂に、遂に、スクリーンで観ることが叶った事です。
アンスティチュフランセでのミカエル・アース監督『この夏の感じ』の上映は11月4日の13:15〜もあるんだけど、昨夜あれだけ素晴らしい新作『アマンダ』を観てしまい、やっぱり今すぐ監督のトーク付上映で観たい気持ちを抑えきれず、TIFFを1本蹴って駆けつけた次第。やっとスクリーンで観れる…。 pic.twitter.com/xgzqsDEK0b
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
『サマー・フィーリング / この夏の感じ』は昨年1月~2月に開催された「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2017」で初鑑賞し、瞬く間に心の底から恋に落ちた1本でした。
当時の記事でも「とにかく!『サマー・フィーリング』をどうか映画館で観られる機会をください!!去年『彼らについて』とか『カプリス』といった大変素敵なmyFFF上映作品を、大きなスクリーンで流してくださったアンスティチュ・フランセ東京さんに期待。。。」と、本作をスクリーン体験することの渇望を記していましたが、まさかそれがそのまま現実になるなんて!しかも、ミカエル・アース監督のさらに素晴らしい最新作『アマンダ』を観た次の日にそれが叶うなんて!さらに2日間とも監督、プロデューサーの実り多きトークショー付と、本当に高まった2日間でした。アンスティチュ・フランセ東京さんに心から感謝。『この夏の感じ』が終わっても、まだまだボルドー国際インディペンデント映画祭シリーズにとても観たい作品がたくさん!去年のカイエ週間特集での上映時は英語字幕だった『ヴァンサンには鱗がない』が、今回は日本語字幕になってるのも嬉しい。行けるだけ行きます。
というわけで前置きはこの辺にして、以下10月に観た新作の私的ベスト1位からです。
1.『アマンダ』
『アマンダ』を観た。前作『この夏の感じ』で提示されたミカエル・アース作品の魅力(全てのカットに注ぐ、今この瞬間に存在する生の営みとそれを収めた景色を誠実に肯定する優美さ)は全てそのままに、物語の厚みや感情描写の深みは桁違いに進化している。特別で極上な、これぞ幸福な映画体験。大傑作。 pic.twitter.com/TAJsVgoGwn
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
ミカエル・アース監督作に初めて出会った前作『この夏の感じ』は、まさに最初のデートで思いきり恋に落ちた感覚で。それ故にハードル激高な2回目のデートよろしく、今夜新作『アマンダ』を観たわけだけど、なんてことだろう絶対プロポーズ決意まで突き抜けた感としかコレは。生涯ベスト映画に会えた。 https://t.co/tHC3lX71Or
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『アマンダ』アース監督の前作『この夏の感じ』で特に印象的だった「ティーンエイジ・キックス」に乗せて屋上で踊る場面と2人でNYの街を疾走する場面のエッセンスが、アマンダと母がエルビスで仲良く踊る場面と、寝坊した主人公とアマンダが小学校まで全速力する場面にそれぞれ引き継がれてて泣けた。 pic.twitter.com/extqJugoY2
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『アマンダ』寝坊した主人公とアマンダが2人で小学校まで全速力するシーンが本当に大好きで、あの場面のああいった描き方こそアース監督の真骨頂だなぁと思う。あの辛い日々が続いていた朝に、とにかく2人で一緒にがむしゃらに走り出すことの意義の大きさを、あんなに優美な肯定感と共に描けるなんて。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『アマンダ』最愛の近親者を突然の死により失った2人が、その悲痛を抱え生きるその後を描くという物語の設定は、前作『この夏の感じ』の再訪とも言えるが、理不尽で絶対的な喪失と悲しみに打たれた残された者達が、それでも人生に再び幸せを見出し得る過程とその尊さの描写はずっと克明に深化してる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『アマンダ』、前作『この夏の感じ』に引き続き、最愛の近親者を突然の死により失う2人の物語を採用してるが、20代同士だった前作から、一方は7歳の姪っ子である点や、今作は病死でなく不特定多数へのテロで犠牲者や遺族が2人以外にもいる点等、人間関係がより社会的になったことで物語の厚みが増した
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『アマンダ』安易じゃなく真に誠実な意味で「ひとに優しい映画」が撮れる稀有な映画作家なんだこの監督は、という感慨を全てのカットからひしひしと感じた。きっと人は誰しも理不尽な悲しみを知る運命にあって、だからこそ、それでも人が幸せに立ち戻る瞬間を幾つも詰め込んだ本作が胸に響いてやまない
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月28日
『この夏の感じ』ミカエル・アース監督トークショー、アース作品の魅力的特徴のセルフ解説、『アマンダ』との相違点、16mmフィルムに拘る理由、トリュフォー提唱の映画製作3つの執筆になぞったアース作品の特徴、ロメール観、マック・デマルコとの初対面等、1時間じっくりトークを聞けて大充実だった。 pic.twitter.com/M0IKKhC0xw
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
ミカエル・アース監督トークショー、『アマンダ』でも『この夏の感じ』でも採用されている16mmフィルムによる撮影に対する拘りについて、16mmはザラザラした不完全な映像であるとした上で、映画の使命とは美しい不完全さを伝えることにこそあり、故に16mmに心を打たれる、という映像論が特に刺さった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
ミカエル・アース監督の、登場人物を自転車に乗せると映像に音楽性がもたらされるという発言が目に鱗だった。『アマンダ』も『この夏の感じ』も伴奏が秀逸だけど、彼の映画はどのカットも伴奏の音楽以前に映像自体が音楽を宿してるように映る。優れた音楽は映像性を携え、優れた映像は音楽性を携える。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月31日
2.『ミス・ペク』
TIFF『ミス・ペク』を観た。大大大傑作。言葉を失う程の圧倒的観応えが最後の最後まで途絶えることがなかった、今年最高級の映画。家庭内児童虐待の残虐さを当事者双方の視点、社会的根深さの視点から多角的に描きながら、かつて被害者だった女性が命を懸けて少女を救い出そうとする姿に打たれ続けた。 pic.twitter.com/GBFfAa5mX0
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『ミス・ペク』かつて自分も母親からの虐待に苦しみ、理不尽な前科を持つ女性が、両親からの日常的虐待に苦しむ9歳の少女を救い出そうとする物語設定は『私の少女』を連想するけど、人間ドラマの濃さ、虐待の現実を描くリアリティ、スリリングな観応えのどれを取っても比じゃないレベルで本当に凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『ミス・ペク』主人公が高校生の時に理不尽な殺人未遂で逮捕された当時の下っ端刑事が、今の彼氏になっている点も一筋縄ではいかない恋愛要素としてとても良く活きているように、破格のシリアスさとスリルで引き込む映画ながら、人間関係を多角的に描写することで風通しはとても良く、理想的な観応え。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『ミス・ペク』児童虐待や家庭内暴力を扱った映画は多くあるけど、本作は間違いなくその最高傑作の一つと呼べる。当事者以外は“他人事の問題”という枠から越えにくいテーマだけど、重層的な物語と圧巻の演技でキャラクターの心理的機微を生々しく描いた本作は、容赦なく観客を当事者に寄せる力がある。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『ミス・ペク』児童虐待の問題として、被害者の子どもがその状態から抜け出せても、その後の人生での自尊心の持ち方に深い影響をもたらす点もじっくり描かれる。主人公が少女に自分を「ミス」ペクと呼ばせるのは、韓国で独身女性が自分自身を蔑む意図で用いる呼ばせ方だとQ&Aで聞けて解釈が深まった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
3.『好きだった君へのラブレター』
今週末公開作で1番楽しみな『マイ・プレシャス・リスト』を前に、同監督によるネトフリ映画『好きだった君へのラブレター』を観たのだけど、なんなんだッ!!てくらい超絶最高の完璧ロマコメで完全悶えた。これヤバイ。どれだけ胸キュンさせたら気が済むのってほど胸キュンの無限連続で心臓が焼けた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』明らかに2018年最高のロマコメだった。あまりにときめきの瞬間が多すぎて、これ一体なんなん!?ってなる程の大傑作。今年の個人的最優秀主演女優賞は、本作のラナ・コンドルでいいです。なんて、なんて表情豊か。これは『マイ・プレシャス・リスト』も間違いなさそう。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』奥手な女子高生が昔好きだった同級生男子と偽造カップル契約を結んで実行する過程を描く物語だけど、契約条件の一つを各々大好き映画だけど相手は観た事がない『すてきな片思い』と『ファイト・クラブ』を2本立にして一緒に観る、にするくだりで悶え死にそうになった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
キスや手繋ぎはダメだけど、『すてきな片思い』でやっていた後ろのポッケに手を入れるのはOKとか、そんなことやってたら絶対本気で好きになっちゃうだろっていう言動を、お互いで次々に積み重ねていくから胸キュンがヤバイ。こんな純粋に可愛い映画、なかなか無いと思う。全部がリアルに可愛い、尊い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』これ映画館で観ていたら、たぶん2018年の私的第1位に選んでた。出てくる男子が大人も含めて、身も心も超イケメン揃いなのがいい。good boysに囲まれたgood girlの初恋コメディを、最高級の表情豊かさと心理的機微の細やかな追求により、リアリティ全開に描ききってる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』主役のラナ・コンドルはアジア系女優で、その点は『クレイジー・リッチ!』が引き合いに出されるけど、アジア系キャストに特化した後者よりも、様々な人種が登場しながらも誰もが分け隔てなく接し合う本作の方が、力強く建設的なメッセージを感じられて好きだと感じた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』偽造恋人契約を続けてきた彼との関係が詰んだ主人公が、その内心では本物の初恋体験を振り返り「頭の中では出来ている。でも実際にやると…」と表現するの、ロードが失恋回想曲「スーパーカット」で繰り返す「In my head, I do everything right」と一緒でハッとした。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
『好きだった君へのラブレター』劇中のBGMもBlood OrangeからエンディングのPainsに至るまでインディポップ系のキラーチューン揃いで堪らないのだけど、特に印象的に使われるLauvの「 I Like Me Better」なんて、彼の気持ちをそのまま体現したような歌詞でぶっ刺さりまくり。 https://t.co/nf6O1u81dy
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
利害の一致による偽恋人同士なのに、一言ラブレターを毎日くれる完璧偽彼との初恋を描く『好きだった君へのラブレター』は胸キュンラブコメの傑作だけど、一生に一度しか書けない究極のラブレターに心震える純愛映画の傑作『シシリアン・ゴースト・ストーリー』が12月に劇場公開されるの、本当に嬉しい https://t.co/dWfCvA93u4
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月16日
4.『ここは退屈迎えに来て』
『ここは退屈迎えに来て』を観た。期待を遥かに超える青春群像劇の快作。これは体験できてよかったと思える、軽やかにして鮮烈な映画体験。地方都市に暮らす、かつて同じ高校の同級生だった若者達が辿る10年間を、時系列を行き来しながら巧みに描く。リンクレイターの青春3部作のタッチがリンクする。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
『ここは退屈迎えに来て』群像劇形式の青春映画として会心の観応え。とりわけ序盤はリンクレイターの青春群像映画を彷彿させる、人物との距離感やシーンの軽やかな切り替えが大胆で心地よく、楽しい。後半はだいぶ心理にフォーカスが寄り、激甘ノスタルジーな描写も増えるが、魅力的な余白も十分残す。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
『ここは退屈迎えに来て』シリアスな青春のテーマを扱いながらも、深刻なトーンに陥らず、終始軽やかで柔らかなタッチが、観客の様々な解釈を受け入れ得る余白や余裕を生んでいる。様々なキャラクターに対し、等しい距離感から平等な眼差しを注いでいる点も好感度大。フジファブリックの歌も合ってる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
『ここは退屈迎えに来て』橋本愛演じる主人公の、言葉少なく表情も整理されてるが故の妙な含みで惹きつける女子像感が、『桐島、部活やめるってよ』のかすみのその後を連想させるし、全体に2000年代の地方都市的青春アイテムで溢れた映画だから、『桐島、〜』好きな人はだいたい好きな映画ではと思う。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
『ここは退屈迎えに来て』過剰演出が目立ってくるクライマックス付近を除き、本当にリアリティの追求が見事で、その巧妙なリアルさがリンクレイターの青春群像作を彷彿とさせるのかも。様々な若者達による幾つもの場面を、俯瞰の視点から透明人間になってその場で眺めてるような、距離を置いた親密さ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
『ここは退屈迎えに来て』幾つもの堪らない三角関係を、どれも堪らない距離感からチラチラほのかに示唆させ続けて、豊かな余韻と鑑賞後の楽しい語り合いに変えて持ち帰られてくれる、魅惑な三角関係の集合体映画としてもポイント高い。特に橋本愛演じる主人公が絡む2つの三角関係の匂わせ方は超絶妙。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月20日
5.『ルームシェア ~時を超えて君と~』
東京・中国映画週間『ルームシェア ~時を超えて君と~』を観た。もう、偉い!!時折出会えるアジアンラブコメ優秀作の素晴らしき遺伝子が炸裂してる。後半での予想を遥かに上回る、盛り上げに盛り上げを重ねていくドラマチック展開にはもはや頭が下がる。これぞロマコメの醍醐味、大いにときめいた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ルームシェア』時を隔て同じアパートの部屋で暮らす2018年に生きる31歳の女子と1999年に生きる25歳の男子 が、ファンタジー設定発動により同時空間で同居する内に、それぞれの悩みを共有し合い、友情が芽生え…という想定内展開からは想像つかない、後半でのガチ切ない胸キュン展開が神掛かってる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ルームシェア~時を超えて君と~』最近ではシネマートもロマコメに冷たくなってる中、ここまで完璧に、優秀なロマコメでしか味わえない甘美な切なさと胸キュンを全力で演出してくれる本作の上映は本当にありがたいし、本当にこれを劇場公開しなくていいのですか?ってくらい、ロマコメとしては最高。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ルームシェア ~時を超えて君と~』タイムトラベルもののコマコメとしては、『あなた、そこにいてくれますか』に近い部分がかなりあるし、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のテイストもあるし、その両者のミックスに、ちゃんと他人→友情→愛情のステップの丁寧な描写を加えたverとも言える。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ルームシェア ~時を超えて君と~』英題が『How Long Will I Love U』で、某映画の主題歌そのまんまだけど、それも納得の出来。途中までこれは男女の友情を描いた映画なのかもしれないと実感させるくらい、安易に恋愛にはならないところが本作は光ってる。だからこそあのキスシーンの最高さったら。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
映画祭でしか上映されなかったけど、私的にとても好きなここ数年のアジアンロマコメ
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
ルームシェア 超时空同居 ←上映中
姉妹関係 骨妹
77回、彼氏をゆるす 原諒他77次
イエスタデイ・ワンス・モア 誰的青春不迷茫
君といた日々 匆匆那年
オーロラの愛 極光之愛
おばあちゃんの夢中恋人 阿嬤的夢中情人
6.『チューリップ・フィーバー』
『チューリップ・フィーバー』を観た。物語の語り手を担っているのが、夫婦に仕えたメイドであり、人妻と画家の不倫劇やタイトルにもなってるチューリップ市場の異常高騰とも距離を置いた彼女の庶民的純愛ストーリーこそが、実は主役を差し置いて最も印象的で輝いている。故の完全に期待を超えた良さ。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『チューリップ・フィーバー』とにかくホリデイ・グレインジャー演じる、主役夫婦に仕えるメイドのマリアが魅力的すぎてのぼせた。表情も行動も最高にかわいいだけでなく、進めば進むほど彼女のストーリーこそが物語の中心になっていく映画で、エンディングもマリア推しからしたら完璧。何度も観たい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『チューリップ・フィーバー』あらすじではメインで語られがちな身分違いの不倫劇は、あくまで一要素の域を出てなくて、男性キャラは総じて作品に推されてない。メインは貴族の嫁とそのメイドの、立場の異なる若い女性2人の生き方と特別な共犯関係描写。恋愛映画というよりクライムサスペンスの風味。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
反感の感想をよく目にする『寝ても覚めても』の朝子の直情的な行動はわりとすんなり見れた私にも、『チューリップ・フィーバー』のヒロイン・ソフィアの行動は幾度もアウトが過ぎた。そんな描写のタイミングも巧妙な映画で、途中からメインヒロインをマリアへと自然に乗り換えてくれたのは嬉しかった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『チューリップ・フィーバー』不倫映画として見ると2人の心理描写もそれを根拠づける行動の描写も雑で、そもそもそこが主とされていない。女主人とメイドという関係を越えた複雑な関係に陥ってしまった2人の女性が、それぞれの幸せをいかにして守ろうとするかを重層的なサスペンスタッチで描いた力作。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
7.『メランコリック』
TIFF『メランコリック』を観た。期待を遥かに超える最高の面白さ。近い将来での成功が約束された出来。バイトを始めた銭湯で日々強制的にヤクザの殺人処理を手伝わされる、という物語設定から、こんなラブリーでさえあるコメディ風情の青春映画経由、胸キュン胸熱バディムービーが繰り出されるなんて。 pic.twitter.com/E2zOf6ohPA
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『メランコリック』東大卒なのにほぼ無職とかやっと見つけたバイト先の銭湯で殺人手伝いとか、序盤からネガティブ設定満載なのに、それらを一貫してフラットな肯定的視点から描いていて、故にラブコメもお仕事奮闘コメディも唐突アクションもバディムービーも全部がナチュラルに同居してずっと楽しい。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『メランコリック』やっと見つけたバイトで突如やらされているのは殺人の後始末手伝いなのに、それを普通の不器用新社会人が主役のお仕事奮闘コメディと何ら変わらぬテンションでやってのけちゃう主人公のキャラ造形が魅力的。内容はアレな仕事でも充実感から恋も頑張れるようになるのが実にラブリー。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『メランコリック』タイトルの理由を、憂鬱という意味以上に、発音のどこかキュートな響きに作品との共鳴を感じたと監督が答えたように、他人から見たらそれが苦境であっても、人間が今まさに何かから生きる糧や情熱や幸せを見出している姿はキュートであること、それが全編に渡ってよく描かれている。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
8.『パンとバスと2度目のハツコイ』
『パンとバスと2度目のハツコイ』を観た。なんて贅沢な作品なのだろうと思った。キャラクターの数もフォーカスを当てるテーマの数もあえて絞り、それらの機微をじっくり丁寧に描き上げる故の、心地よさと味わい深さの理想的両立。今泉監督作品、やっぱり最高に好き。この上なく幸せな映画体験だった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『パンとバスと2度目のハツコイ』様々な性格や背景を持つ人達が抱える多様な悩みを群像劇的に描くことで、恋愛の本質を浮かび上がらせるイメージが強かった今泉監督作品だけど、本作は恋愛の中でも一番甘苦いワンテーマを贅沢にフィーチャーしていて、その余裕が映画としての豊かさに大還元されてる。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『パンとバスと2度目のハツコイ』恋をすれば当然その人の本質やより奥の方を知りたいと思ってしまうけど、本当の姿をちゃんと知れば知るほど恋なる幻想は解け、好きに陰りが産まれるという、恋愛で一番堪らないジレンマを、こんなに本質を余すことなく、かつ心地よい映像劇として描写できるのが凄い。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
『パンとバスと2度目のハツコイ』過去の今泉映画と比較しても、恋愛の本質により直接的に切り込んだ作品である一方で、火事になったお菓子屋から甘い香りが町に溢れたエピソードに対し、それが本当かどうかはどうでもいい、とヒロインに力強く確信的に叫ばせるところが、今泉映画を好きな端的な理由。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
今泉監督作品は、確かに恋愛の本質に切り込んでいくけど、本質を解き明かすことや本質に適うことが良い恋愛、正しい恋愛とはしていないところが、毎回観たくなる理由で、『パンバス』の焼けたお菓子屋をめぐる一連のやり取りと行動は、今泉監督の恋愛映画に対するスタンスを象徴しているように感じた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月6日
9.『ファントム・スレッド』
『ファントム・スレッド』を観た。最初から最後まで完全に時間感覚を忘れ去り、ひたすら食い入るように観入りるばかりの、一種の理想的映画体験。端から端まで魅惑的エレガンスで埋め尽くされていて、私などはもう何も抗う術なし。一瞬で酔いしれてしまうカットの無限連続。美しく澄んだ官能に蕩けた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ファントム・スレッド』 恋愛サスペンス劇に溶け込んだ『ディオールと私』ともいえる贅沢この上ない観応えがあって、メゾンの舞台裏描写という点だけとっても、例えば伝記映画の『イヴ・サンローラン』よりも写実的でリアリティがある印象。恋愛ドラマも緩急のバランスが絶妙で思いきり満喫できた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ファントム・スレッド』2人の関係が危機を迎えた時に、その関係に真に依存していた側はどちらであったかが明らかになり、それを守るために倫理を越えた行動に走る点等は『かごの中の瞳』とも共通しているけど、程度の差はあれ、これらと同じ構造に端を発する行動を、私もきっと沢山やってきている。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
『ファントム・スレッド』ラストシーンでの彼の反応は一見衝撃的で倒錯しているようにも見えるけど、大抵の恋愛関係には、自滅に向かっていると分かっていても相手の愚かしさに乗ってあげることを悦ぶような、共犯的なデカダンス願望が存在すると思うし、見事に普遍性を貫いたエンディングだと感じた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月21日
10.『世界の優しき無関心』
TIFF『世界の優しき無関心』を観た。亡き親が残した借金返済の為、無残な政略結婚の罠に揺れるお嬢様を救うべく、無骨な素朴さとユーモラスな優しさを兼ね備えた最高に魅力的な使用人が全力の愛で困難を切り開こうとする。写実的で乾いた質感の映画だけど、その内側にある強く尊い本物の愛に撃たれた。 pic.twitter.com/w7plYSNtdG
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『世界の優しき無関心』とにかく苦境に揺れる主人公のお嬢様を傍でそっと見守り、全力で助け出そうと励み続ける使用人のマッチョマンが何から何まで最高に魅力的で。様々な映画で様々な強い男が出てくるけど、個人的に彼ほど本当の意味で一番カッコいい“強い男”には今まで出会ったことがなかったほど。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『世界の優しき無関心』2人の男女間を繋ぐ強い信頼と純粋な愛情が、乾いたタッチで描かれる非情で残酷な世間の姿を背景に、凛と穏やかに美しく浮上し続ける作品。それは浮き足立ったロマンチック映画とは対極にある、愛のために現実を生きる覚悟と確信に裏打ちされた、静かだけど強靭な愛情描写映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
『世界の優しき無関心』タイトルはカミュ『異邦人』からの引用で、そこと対比的に描かれるシーン、お嬢様を守ろうとする使用人が同著から「その男のあらゆる信念も、女の髪の毛一本の重さにも値しない」の一節を添えて、自身の世間への距離感や彼女への絶対的な愛情を告白する下りは最高にグッときた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月27日
11.『微笑んで』
『微笑んで』優勝者に大金が贈与されるテレビ企画のマザーコンテストに挑む、10人の母親達の決勝放送に至るまでの3週間を描く群像劇。ハイテンポな前半には柚木麻子的な面白さを見たけど、ラスト3日あたりから一気にエモさが増し、女性を消費物として扱う社会の酷さを告発し、異を唱える圧巻作へ変貌。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月13日
『微笑んで』予想よりずっと軽快だなーなんて前半を観てたけど、決勝放送まで残り3日を切った辺りからどんどん濃厚さが増し、決勝当日の観応えは極上だった。イリナ、最高カッコいいよ!!いけ!!からの、あのラスト。言葉は無くとも、あの強烈なエンディングに込められた力強い意思表明に打たれた。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月13日
『微笑んで』ステージコンテストに挑む挑戦者達の、本番に至るまでの各々の暮らしや家族環境、コンテストに懸ける気持ちをテンポのよい群像劇として描く構成は、音楽演奏がフィーチャーされる点も含め『タレンタイム』ととても近しい。後者は学生達が主役だけど、本作はその母親達に焦点を当てた物語。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月13日
『微笑んで』主要キャラのグワンツァが、先日読了した柚木麻子『けむたい後輩』の栞子にすごく似てる部分があって(男性の浅はかで悪いところをあえて利用して道を開こうとするタイプ)、本作が告発する問題は、男性の側が変わらなければ解決には近づけないだろうと思う。現代の日本にこそリアルな映画。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月13日
今日から始まったジョージア映画祭、『微笑んで』のクライマックスの圧巻なる観応えに酔いしれてたのもあるけど、本当に理想的な映画祭だと感じられた。全上映作品を解説した資料を1冊200円で販売しているのも、こういった映画祭に足を運んでくる観客が求めるものをよく分かっているなーって感動した。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月13日
12.『詩人』
TIFF『詩人』を観た。経済体制の変遷が一般市民の生活様式も大きく変えていく80s〜90sの中国の炭鉱町を背景に、未来への希望を作詩に託しながら相思相愛で暮らしていた労働者夫婦が辿る奥深い運命を、軽やかな語り口と重厚な物語との絶妙なバランスで描く。アサイヤス『感傷的な運命』に彷彿する感慨。 pic.twitter.com/z23BtNo0cg
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
『詩人』多くの労働者が詩や文学の創作に自らの運命が変わることを託していた80s中国の炭鉱町で、妻の決死な協力により詩人会社員として運命を切り開いた主人公が辿るその後の人生を通して、市場経済の発達により詩や文学の求心力が衰えていく90sへの社会変動をパーソナル視点から描写する手腕が秀逸。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
『詩人』昼は炭鉱で働き、夜は自宅で作詩に没頭する夫を、自らも工事で働きながら最上の献身と母性的な優しさで支え続ける妻を「詩は書いていないけど、彼女も詩人だった。夫が詩で運命を切り開けるよう支える、その精神世界の中で彼女も詩を綴っていた」と女優が説明した時の解釈への感銘が凄かった。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
『詩人』社会や時代の変遷を壮大な炭鉱町のもとで描いた重厚な物語であるのに、その語り口はとても軽やかな点がとても魅力的。前半の仲良し夫婦のラブラブぶりはキュートなほど。夫の詩人としての活躍に伴い夫婦関係も変化し続けるけど、常に解釈をちらりと示唆するミステリアスなゆとりがあって好き。
— SunCityGarden (@SunCityGarden) 2018年10月29日
私的13位から26位まではこちらを。
・2018年9月の私的ベストシネマ